内容説明
トナカイ所有者殺害の前日、カウトケイノの博物館から世界的に貴重なサーミの太鼓が盗まれるという事件が起きていた。実は殺された男は数少ないサーミの太鼓のつくり手でもあった。二つの事件に関連はあるのか。クレメットとニーナは盗まれた太鼓のルートをたどる。寄付主はかつてフランス人探検家がこの地を訪れた際に同行して、サーミ人のガイドから件(くだん)の太鼓をもらったというのだ。七十年以上前のその探検では、ひとりの隊員が亡くなっていた。一年の内四十日間太陽が昇らない極北の地で、トナカイ警察コンビが悲しみに満ちた事件の真相に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナミのママ
61
トナカイと共に暮らし移動する先住民族に国境という線引きはなかった。環境に優しい風力発電の音もトナカイには騒音でしかない。サーミ人の貴重な太鼓の盗難事件とトナカイ所有者の殺人事件は、北欧人との軋轢、宗教、発掘調査、歴史的深みのあるストーリーに進展していく。犯人探しだけでなく、民族の文化、快適な暮らしとは何か、色々と考えさせられた作品だった。北欧作品に多く見られる崩壊家庭やアルコール問題とは違う重苦しいテーマ。好みがわかれるようだが私は重厚で面白い作品だと思った。【フランスミステリ批評家賞】他23賞受賞2023/01/04
星落秋風五丈原
33
あまり取り上げられない文化が紹介されていてよかった。2021/12/27
ばんだねいっぺい
30
下巻の方が面白い。スロースターターな小説だ。バディの絆もようやく整い物語も佳境へ向かって動いていく。終わり方があれだが、ついつい、次も読みたくなるような魅力があるから不思議だ。2023/01/23
シキモリ
26
下巻は民俗学に地質学、更に環境問題も絡み合う盛り沢山の内容。その所為か、些かまとまりに欠ける印象は否めない。蘊蓄が多く、決してテンポは良くないが、終盤で一気に畳み掛けてくる。気骨のある孤高のサーミ人・アスラクの哀しみに思わず胸が痛んだ。今年中に続編が刊行されるようだが、こんな場面で中途半端に幕を引かれると流石に読まざるを得ない。残念だったのは、謎解きのキーでもある太鼓のイラストが作中に挿入されていなかったこと。私の想像力があまりに乏しく、皆が太鼓の絵柄について議論するシーンは画が全く浮かばなかったので…。2022/03/17
み
22
満足♪四十日間太陽が昇らないって、想像できないです。下巻でキャラがハッキリして楽しさ倍増しました、エヴァ所長がイチオシ^ ^シリーズ翻訳して欲しいです。2023/02/11