内容説明
ハルコンネン男爵の策謀により、アトレイデス公爵は不慮の死をとげ、再度アラキスは男爵の手に落ちてしまう。公爵の世継ぎポールは、巨大な砂蟲が跋扈する危険な砂漠へ母ジェシカとともに逃れ、砂漠の民フレメンの中に身を隠すことになる。しかしこの過酷な環境と香料メランジの大量摂取が、時間と空間を果てしなく見通す超常能力をポールにもたらした。彼はフレメンの伝説の救世主、ムアッディブとして歩みだすことに!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ねこ
168
ストーリーもさることながら、ジェシカとポールの精神世界の心の揺らぎ、考え、状況を文章化する原作者と訳者の言語能力に脱帽です。ベネ•ゲセリットの上位能力者であるジェシカだけでも凄かったのに更に最高能力者教母の高みに上がりアラキスの歴代教母の全知識を獲得とは。しかしそれによってポールの敵に堕ちてしまう。ポールも不確定な未来視のの選別の精度を上げ、真理をより的確に選択できる経験を積んでいく。下巻では母と子の争いの予感。何だかハルコンネン一派がポールやベネ•ゲセリット一派に比べて劣っている勢力に感じてしまった。2023/08/28
パトラッシュ
167
(承前)情け容赦なく先住者を虐殺し、嬉々として富の収奪に励むハルコンネンによるアラキス征服は、今読むと否応なくロシアのウクライナ侵攻に重なる。生きるのも難しい砂漠に逃れたポールはフレメンに受け入れられ、メランジの大量摂取で超常能力を得て救世主ムアッディブとしての立場に目覚めていく。このフレメンの伝統と生活の描写こそ中巻の肝であり、独立の民は決して弾圧されるがままでなく、自由を勝ち取る指導者への成長のドラマが展開される。侵略の苦しみに耐えるウクライナ人が、ロシアの暴虐から解放される日を信じるように。(続く)2024/02/11
ケイ
117
ボールとジェシカの関係が不可解。自立した息子が母に対し距離をおいてみることはあるとしても、母がこのように理屈っぽく息子の行動を判断するだろうか。彼らの元々の仲間や味方がほとんど残っていない状況。最後は、ボール対フェイド=ラウサになるのが定石だろうが、母ジェシカはどういう立場となるのだろう。下巻へ。2016/07/24
藤月はな(灯れ松明の火)
89
辛くもハルコンネン家からの追跡を逃れたポール達。そして彼は夢で逢えた少女、そして今後の自身の運命を共にする同志、砂漠の民フレメンと邂逅する。一方、ハルコンネン家側は最強のメンタート、スフィル・ハワトの不信を突き、引き入れようと目論んでいた。開花した予知能力から最悪の事態を避けようと模索するポールが母を最も警戒するという描写が衝撃的だが、同時に納得がいくという複雑さ。何故なら愛に曇らされた策が最善の解決策になる事は少ないからだ。そして砂蟲の秘密が明かされる所は『風の谷のナウシカ』の王蟲と腐海を連想した。2021/10/11
南雲吾朗
67
いよいよ物語が動き出す。砂漠を渡るポールとその母に、こんなにも様々なドラマがあったことは、映画を観ただけでは解らなかった。一番驚愕したことは、ウラディミール・ハルコンネン男爵の驚異的な頭の良さと人の使い方である。恐怖と、褒美をバランスよく使い。どのタイミングで首を挿げ替えるか。まさに芸術的な(悪魔的でさえある)人事、経略の能力を発揮する。先の先までヴィジョンをもって悪魔の采配を施行する様は本当に学ぶべきものがある。並みの悪党ではない。いやぁ、本当に面白くなってきた。いざ最終巻へ。2020/08/29