内容説明
“すぐ目の前にあって――わたしをまっすぐ見つめかえしていたの”名探偵〈アティカス・ピュント〉シリーズの『愚行の代償』を読んだ女性は、ある殺人事件の真相についてそう言い残し、姿を消した。『愚行の代償』の舞台は1953年の英国の村、事件はホテルを経営するかつての人気女優の殺人。誰もが怪しい謎に挑むピュントが明かす、驚きの真実とは……。ピースが次々と組み合わさって、意外な真相が浮かびあがる――そんなミステリの醍醐味を二回も味わえる、ミステリ界のトップランナーによる傑作!/解説=酒井貞道
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
514
上下巻、850頁強、完読しました。ミステリとして一定レベル以上のクオリティはあると思いますが、続編のため、サプライズは少なめで、個人的には各ミステリ賞四連覇&激賞&大賞賛の評価はしていません。アンソニー・ホロヴィッツブランドの過信もある気がします。2022年、各出版社の翻訳ミステリ担当者は、アンソニー・ホロヴィッツの五連覇を阻むべく良質で面白い作品を送り出して欲しいと考えています。 http://www.tsogen.co.jp/news/2021/12/3068/2022/01/04
パトラッシュ
428
(承前)作中作『愚行の代償』にアランがヒントをひそませていたフランク殺害事件の真相と、隠されていたホテル経営者一家の抱えた秘密と女性失踪の謎を、ふとしたきっかけでスーザンは一気に見抜いていく。完全に見落としていた伏線が最後の推理に照応していくプロセスは、フェアプレイに徹した構成力に感嘆させられる。『カササギ』と同じ趣向だが、完成版が不明だったジグソーパズルのピースが一気に組み合わさっていく快感は圧倒的だ。英国ミステリ界はホロヴィッツの登場で、クリスティやカーを擁した時代から1世紀後の新たな黄金期を迎えた。2021/10/16
青乃108号
396
前作【カササギ】は作中作の物語そのものには現実世界との繋がりはないし、正直細かい部分は忘れてしまっても、さほど問題はなかった。(と思う)が、今作【ヨルガオ】は上巻でたっぷり現実世界の殺人事件を読まされた後、作中作でも殺人をめぐる濃密な人間ドラマを【精読】させられ、そこから再び現実世界の物語がこれまた濃密な愛憎劇。大変疲れた。読み終えてやはり【カササギ】を超える事は出来ていないと感じた。そしてラスト、物語の語り手はアラン・コンウェイと決別し現実に戻って行く。3作目はもう書きませんという宣言だと受け取れたが。2022/03/10
旅するランナー
321
オレが犯人を当ててやるぜ!って意気込むんですけど、そんな幼稚な推理力なんて軽~く超えていくホロヴィッツの構想力・文章力・構成力。今作も正統派推理小説をタブルで楽しめる入れ子構造。シナジー効果バッチリで、思わず「あんたは巧い」って称賛しちゃいます。海外ミステリー小説ファンはよりもっと楽しめるでしょうし、シェイクスピアやオペラ好きも結構納得できる、引用がイイんよー。2021/11/29
白いワンコ
304
ラスト四章、次々めくられるカードで暴かれる真相が圧巻…解説に著された通り、それは驚くほどフェアで、フェアにヒントを散りばめておきながら、(いつ気づくの?最後まで気づかないんでしょ??)とばかりに最後の最後、ダメ押しに明らかにされるアナグラムは、思わず本を叩きつけたくなるほど小癪だ!(誉め言葉)。来たる年はホーソーンのターン。またやられる気満々でお待ちしております2021/11/24