ちくま新書<br> 香港危機の700日 全記録

個数:1
紙書籍版価格
¥1,265
  • 電子書籍
  • Reader

ちくま新書
香港危機の700日 全記録

  • 著者名:益満雄一郎【著】
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • 筑摩書房(2021/06発売)
  • ポイント 10pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074058

ファイル: /

内容説明

2019年、ピーク時には100万人超とも言われる市民が抗議デモに参加した香港の民主化運動。言論や表現だけでなく、デモや集会などの政治的な自由も保障してきた香港の「一国二制度」。中国共産党はこの制度を50年間継続すると約束したにもかかわらず、20年6月、治安法制「国家安全法」を導入。一万人を超える市民が警察に逮捕され、民主派議員は失職し、香港は「沈黙の街」と化した。朝日新聞・前香港支局長が、その始まりから、厳しい弾圧により絶望が広がるまでを鮮烈なタッチで描く。民主派から親中派まで、無名の市民から大物政治家までを徹底取材した、比類なきドキュメント!

目次

まえがき
一国二制度の基礎知識
第1章 たまるマグマ
1 台湾に脱出した男
最初のデモ
はじまりは台湾での殺人事件
強気の香港政府
中国が裏で指図?
故郷を捨てた元書店店長
インタビュー1 元銅鑼湾書店店長 林栄基氏
2 政府と民主派、深まる対立
デモ第2弾、参加者は10倍増に
経済界の「面従腹背」
議会で衝突、負傷者続出
中国政府、改正案を支持
天安門事件追悼集会に熱気戻る
第2章 抗議のうねり
1 香港史上、最大級のデモ
デモに戻ってきた若者たち
150発の催涙弾でデモ制圧
「200万人+1人」のデモ参加者
雨傘運動のリーダーが出獄
G20で世界にアピール
インタビュー2 香港政府行政会議メンバー 葉国謙氏
インタビュー3 民主活動家 周庭(アグネス・チョウ)氏
2 議会占拠
厳戒下の返還記念日
未明の緊急記者会見
「改正案は死んだ」というレトリック
相次ぐ自殺
標的にされた中国政府機関
市民を襲う、白いTシャツ姿の集団
インタビュー4 立法会に突入した林さん(仮名)
第3章 怒りと憎悪
1 空の玄関口を止めた
デモ隊の連係プレー
空港占拠で欠航相次ぐ
奇妙な「特ダネ」
中国、武力で威嚇
「8・31」の攻防
インタビュー5 香港バプテスト大学助理教授 鄭 (エドモンド・チェン)氏
2 遅すぎた撤回
中高生が授業ボイコット
香港トップの限界
ようやく完全撤回
止まらぬデモ
雨傘運動から5年
インタビュー6 元香港政務官 陳方安生(アンソン・チャン)氏
第4章 緊迫と混迷、極限に
1 警察官の発砲
学生記者の独占映像
メンツをつぶされた習近平
52年ぶりの「戒厳令」
警察の家族、複雑な思い
「殺人犯」が出獄、野放しに
インタビュー7 香港城市大学教授 葉健民(レイ・イップ)氏
2 民主派、区議会選挙で圧勝
北京の「操り人形」
衝突で初の死者か
大学が「戦場」に
勇武派の青年の素顔
区議会選、政府に「ノー」
二つのジレンマ
親中派の大敗、北京に衝撃
米国で香港人権法が成立
インタビュー8 立教大学教授 倉田徹氏
第5章 深まる分断と対立
1 抗議活動は越年、見えない出口
「青店」か? 「黄店」か?
習近平のいら立ち
世界に助けを求めるクリスマスカード
救護ボランティアの奮闘
2 コロナ禍で混迷に拍車
中国政府、現地トップを更迭
香港と台湾、深まる連帯
香港を襲ったコロナ・ショック
干された大物俳優の気概
インタビュー9 俳優 アンソニー・ウォン(黄秋生)氏
第6章 国家安全法の衝撃
1 習近平、我慢の限界に
突然の速報、走る激震
「いま立ち上がるしかない」
口を開いた親中派のドン
2 施行前から広がる恐怖
「最後」の天安門事件追悼集会
「金融センター」香港の動揺
あれから1年
忍び寄る密告社会の影
司法への信頼が低下
「香港の良心」が引退
施行前、最後のデモ
インタビュー10 民主派団体「支連会」主席 李卓人氏
インタビュー11 香港政府行政会議召集人 陳智思(バーナード・チャン)氏
第7章 弾圧の嵐
1 民主活動家の動揺
国家安全法、施行後初のデモ
出国した雨傘運動リーダー
萎縮する「表現の自由」
中国の治安機関、謎めく活動内容
民主派の予備選挙に行列
インタビュー12 元立法会議員 区諾軒氏
2 総崩れの民主派
禁じられた「国歌」
ボストンから消えた若者
国家安全法を歓迎する親中派
「社会全体が刑務所みたいなもの」
民主派12人が出馬禁止
議会選1年延期
インタビュー13 民主活動家 黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏
第8章 香港はどこへ
1 統制されるメディア、脅かされるリベラル教育
「標的」にされたメディア界の大物
外国メディアにも統制強化
大幅に減らされたリベラル教育
強まる教科書管理
インタビュー14 元明報編集長 劉進図(ケビン・ラウ)氏
2 広がる絶望、描けぬ将来像
前代未聞の脱出劇
「自由を失った香港に未練はない」
実弾で撃たれた若者も脱出
崩壊した三権分立、「翼賛議会」に変質
逆回転する民主化の歯車
インタビュー15 香港中文大学副教授 周保松氏
あとがき
関連年表

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アーク

6
中国からの弾圧という香港に迫る危機を追った本書、中国からの手段を選ばない圧迫に唖然とすると共に、香港の将来を案じざるを得なくなった。ますます帝国主義の如くなっていく中国が香港という「国」の自由を一切合切奪ってしまうのではないか、そしていずれは台湾さえもそうなってしまうのではないか、という懸念は消えることはないよな。そして暴力さえも正当化する悪法が強行的に採決されてしまうというのは香港の民主主義を奪う布石と言わざるを得ない。香港の将来が不安になった一冊。2021/08/27

そうめん

3
台湾で起きた香港人による殺人事件が全ての始まりだった。犯罪者を中国本土に引き渡せる「逃亡犯条例改正案」が成立すると、中国政府が「犯罪者」と認定した人が捕まることになる。「反送中」のデモはやがて民主化を求めるデモへと移り、それは過激なものになっていく。香港という特殊な都市が抱える事情がよく分かりました。結局、香港の言論の自由、表現の自由は制限されて、希望は失われたかに見えます。やっぱり民主主義という政治形態の方がいいと思いました2021/09/15

crnbooks

2
100万人以上がデモに参加し、千人以上が逮捕された2019-2020年の民主化運動の証言と記録。三権分立を廃し行政主導の政治制度へと修正され、一国二制度は国が上位にあるとされ、相互監視や自己検閲が社会の中で広がって行く時点で本書は終わっていた。現在はインタビュイーたちは国外移住、服役中、釈放後公に出ない等様々な状況にあるよう。コロナの3年間を経て、壮絶な民主化運動の中でさえ希望を持っていた人たちは今、絶望しているのだろうか。2023/10/09

ori

2
時系列で客観的な視点で香港に何が起こったかを復習できる。どちらの側にも偏っていないと思うし、インタビューしてる人達もなかなか幅広い。ただもう少し突っ込んで欲しいと思うこともあったり。あくまでさらっと、改めて知りたいというにはいいかも。20年の秋までのことが書かれているのだけど、そこから起こった想定を上回る現実の加速度よ…この本でインタビューされてる人達に同じ質問を今したら一体どんな答が返ってくるのだろう…と考えてしまったり。この本の時点ではまだみんな希望を全然捨てていなかった。2022/11/01

guanben

2
2020年6月に成立した香港国家安全維持法は、香港に適用されてきた「一国二制度」を実質的に終わらせ、北京政府の強権がいつでも発動できる体制が確立されたと言われる。これに関連する2019年から20年までの動きを、民主党派の動きを中心にレポート。身の危険を感じながらの綿密な取材に敬服する一方、権威主義にひた走る習政権の対香港政策の内在的理論について、もうちょっと考察が欲しい。そこはちょっと物足りない。2021/08/16

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/17978579
  • ご注意事項