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内容説明
日本の教育学の泰斗として知られる著者が、学生時代から一貫して取り組んできた「自己意識論」を集大成としてまとめた論集の最終第5巻。
人は他人との比較において、ともすると誰もが同じ共通の世界で同じように生きている、と考えてしまう。しかし、一人ひとりの見ているもの、一人ひとりにとっての「現実」は、全く異なったものである。自分にとっての「当たり前」が他人にとっては「当たり前」でなかったり、自分にとっての「現実」が他人にとっては「現実」でなかったり、ということは日常茶飯事であり、当然至極のことである。
一人ひとりが一人きりで生まれ、毎日の生活を通じて自分だけの体験を積み重ねていき、その人に特有の感性やこだわりを形作っていく。類似した「現実」を持っているように見える場合であってもその内実は一人ひとりで全く異なってくる。こうした個々人の持つ「現実」の根本的相違を重いものとして受け止めるかどうかが、真の人間理解を進めていくうえでのポイントである。
第5巻では、一人ひとりが個別に持つ内面世界について考察し、共同幻想にふりまわされることなく、人間理解を深め、いかに自分の「現実」を生きるかを説く。
また、『徒然草』や千利休、聖徳太子、親鸞ら先人の教えをひもときながら、内面世界を豊かに育て整えるためのヒントを呈示する。
目次
プロローグ それぞれの〈私〉にとっての「現実」……5
Ⅰ-内面世界とは何か
第1章 内面世界― 自己意識と有機体自己と社会的自己と……22
第2章 多様な自己提示と自己アイデンティティ― 社会的期待といかに対峙するか……37
第3章 心の構造をめぐって― 意識の世界から本源的自己まで……52
Ⅱ-内奥の本源的自己という基盤
第4章 意識下の「本源的自己」との連携強化―「深い生き方」のために……68
第5章 主体的であることの内面的基礎……81
Ⅲ-現代社会を生きるために
第6章 プロテウス的人間―「変身」の日常性について……90
第7章 生きる原理としての自己認識・自己概念……99
Ⅳ-自己実現と志と
第8章 「心」の望ましいあり方の実現のために……114
第9章 自己実現への渇きと促しを……127
第10章 自己提示の病理と志ないし宣言としてのアイデンティティの可能性……141
Ⅴ-内面性を重視した心理学のために
第11章 内面世界の心理学―「心」を研究するということ……156
第12章 内面性を重視した心理学の研究方法とは……168
Ⅵ-内面世界を育て整えるために
附章1 慎み― 欲望を制する……184
附章2 冷暖自知― 体験し経験化をはかる……193
附章3 不審の花―「覚」ということ……208
附章4 世間虚仮―〈我の世界〉を重視する……218
附章5 慎みにもとづく和を― 日本の精神的伝統の再認識…236
エピローグ 自己を見つめ、自己を語ること……247
あとがき……261
全5巻の索引(事項・人名) ……281
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