内容説明
本書は,社会経済データを実際に分析して社会現象のモデルを構築できるように,分析の手順から分析結果をシミュレーションモデルにつなげることを中心に,データ解析とエージェントシミュレーションの統合の仕方について解説した。
目次
1. データ解析とエージェントシミュレーション
1.1 大規模データ解析から社会動向が予測可能か
1.1.1 スカート丈と株価
1.1.2 スカート丈から大規模データへ
1.1.3 大規模データを利用した社会予測の限界
1.1.4 未知の社会的状況に挑むにはどうすればよいか
1.2 シミュレーションが必要なわけ
1.2.1 ミクロ・マクロループとシミュレーション
1.2.2 シミュレーションによるミクロ・マクロループの分析
1.2.3 実データから抽出した個人行動ルールのテスト
1.3 システムの分類
1.3.1 閉鎖システム
1.3.2 動的システム
1.3.3 開放システム
1.3.4 動的開放システム
1.3.5 ミクロ・マクロシステム
2. 軌跡データと移動シミュレーション
2.1 データ分類による社会現象モデルの作成
2.1.1 まずはシステム状況の分類から
2.1.2 階層クラスタ分析の手順
2.1.3 非階層クラスタ分析
2.2 クラスタ分析による移動軌跡マイニング
2.3 子供の室内転倒事故予防シミュレーション
2.3.1 目的地設定
2.3.2 目的物への移動アルゴリズム
2.3.3 転倒リスク評価
2.3.4 乳幼児行動観察システム
2.3.5 多解像度クラスタ分析法
2.3.6 ケース1:駆け回りタイプ
2.3.7 ケース2:おもちゃ遊びタイプ
2.4 手術室内ワークフローシミュレーション
2.4.1 超音波式位置計測システム
2.4.2 軌跡データ分析と移動シミュレーション
3. 購買データとマーケティングシミュレーション
3.1 動的開放システムのモデル構築
3.1.1 データの種類とモデル構築手順
3.1.2 ミクロレベルのモデル化とマクロレベルのモデル化
3.2 マーケティングシミュレーション
3.2.1 ID-POSデータの概要
3.2.2 ミクロな購買行動の特徴を表す態度変数
3.2.3 主成分分析による購買行動の特徴量選択
3.2.4 購買態度の変容モデル(動的開放システム)
3.2.5 ブランド購買モデル
3.2.6 マクロデータによるモデル検証
4. 時系列モデルの基礎と金融市場データへの適用
4.1 イントロダクション
4.2 金融市場に見られる代表的経験則
4.2.1 価格変動のべき則
4.2.2 価格差とボラティリティーの相関
4.2.3 時系列モデルのイントロと高校数学の復習
4.3 ランダムウォーク
4.4 自己回帰(AR)モデルとそのパラメータ推定方法
4.4.1 AR過程のパラメータ推定方法
4.4.2 実データを用いたAR過程のパラメータ推定
4.5 ARCH,GARCHモデル
5. パンデミックシミュレーションとデータ同化
5.1 感染症数理モデリング
5.2 個人ベースシミュレーション
5.3 事例紹介
5.3.1 東南アジアにおける新型インフルエンザ封込め試算
5.3.2 都市における流行とワクチンによる集団免疫強化
5.3.3 パーソントリップ調査の活用
5.3.4 データ同化による予測の事例
6. 可能世界ブラウザとしてのエージェントシミュレーション
6.1 データ解析とエージェントシミュレーションの統合の3段階
6.2 ステップA:マクロデータの再現
6.2.1 ブログでの単語出現モデル
6.2.2 金融市場におけるべき乗則の再現
6.3 ステップB:ミクロデータに基づく行動モデル構築
6.3.1 不特定多数の人流データに基づく避難シミュレーション
6.3.2 移動軌跡データに基づく室内移動シミュレーション
6.4 ステップC:過去データにない新エピソードの発見
6.4.1 ID-POSデータに基づく購買行動モデルの構築
6.4.2 特定ブランドのマーケットシェア増大エピソードの作成
6.4.3 内部状態分析による顧客ターゲティング
6.5 実データ解析とシミュレーションとの統合の可能性
6.5.1 可能世界ブラウザで見るブラックスワン
6.5.2 可能世界ブラウザの関連研究
6.6 おわりに
引用・参考文献
索引