内容説明
ジョン・ソーンダイク博士は、20世紀初めに数多登場したシャーロック・ホームズのライヴァルたちの中でも最も人気を博した名探偵である。当時最新の科学知識を犯罪捜査に導入、顕微鏡をはじめ様々な実験器具を用いて証拠を調べ、事件の真相をあばいていく法医学者ソーンダイクの活躍は読者の喝采を浴びた。また短篇集『歌う骨』では、最初に犯人の視点から犯行を描き、次に探偵が手がかりを収集して謎を論理的に解き明かす過程を描く「倒叙ミステリ」形式を発明した。真相解明の推理のロジックに重きを置いた作風は、現在も高く評価されている。本全集は、ソーンダイク博士シリーズの中短篇42作を全3巻に集成、初出誌から挿絵や図版を収録し、完全新訳で贈る、探偵小説ファン待望の決定版全集である。
第2巻は、後に長篇に改稿された単行本未収録の中篇「ニュー・イン三十一番地」、海を舞台にした倒叙物「死者の手」を巻頭に、短篇集『大いなる肖像画の謎』(1918)から「消えた金貸し」など2篇、さらに作者のエジプト趣味も窺える宝探し暗号小説「青いスカラベ」や、証拠に付着した埃の顕微鏡検査から強盗殺人犯を追及する科学者探偵の本領発揮の「ニュージャージー・スフィンクス」など、第一次大戦後に再開されたシリーズ7篇をまとめた短篇集『ソーンダイク博士の事件簿』(1923)を収録。付録エッセー「探偵小説の技法」他。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ガットウ
22
★★★3.8点。古典ミステリー(ホームズとほぼ同時代)は、集中して読まないと内容が入って来ないので大変疲れましたが、楽しめました。2021/03/07
本木英朗
21
〈ソーンダイク博士短篇全集〉2巻である。博士の初登場作として執筆され、後に長篇に改稿された単行本未収録の「ニュー・イン三十一番地」、イングランド南西端、ウルフ・ロック灯台周辺の海域を舞台にした倒叙物「死者の手」など13篇の中・短編を収録している。どれもこれもよかったよねえ。さすが作者フリーマンである。さらに1巻でも出てくる訳者の渕上痩平先生にも!と言っておこうか。いやはや、すごかったよねえ。次は3巻かなあ。ではでは、また。2021/01/16
星落秋風五丈原
18
倒叙形式あり。2021/01/29
内島菫
18
私は常々、説明なしで分かることが本当に分かるということだと感じているが、本書の名探偵ソーンダイク博士がまさに事件の経緯を最初に聞いた段階で、つまり捜査を開始する以前からすでに犯人と犯行方法のあらましが分かっているのは、確かに超人的に見えるが真理だと思える。彼の前でそうした説明なしの理解をすることのできないジャーヴィス(ともちろん私も)のお決まりのうっかりさと、それに対するソーンダイク博士の「おいおいジャーヴィス」という驚きあきれそしてたぶん楽しんでいるだろういつものやりとりが愉快。2021/01/05
Urmnaf
12
短篇全集その2。ソーンダイク博士のシリーズは、いわゆる本格推理と言われるものの中で解決過程のロジカルさはピカイチ。メジャーどころは第1巻で既出だが、今巻所収の作品もどれも端正な出来。その分、変化に乏しいというか、予定調和的なところもあるけど。黄金虫の向こうを張る表題作「青いスカラベ」は、暗号物とは言い難いが、とてもソーンダイク的。スカラベ印章のことを知らず、フンコロガシにヒエログリフが書かれてる物をイメージしててなんだか話が噛み合わなかったのはナイショだけど。2021/01/19
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