内容説明
死をめぐる6つの静謐(せいひつ)な物語。静かな悲しみを描く――弟の月命日に墓参りをした恵は、墓前に皮を剥かれた蜜柑があるのを見た。柑橘類が好きだった弟への妻・美也の思いやりと思っていたが、そうではないと知り、ひそかなわだかまりを感じる。という「菊日和」ほか、必ずしも幸福ではなかった死、誰の胸にもある奥深く秘められた物語を、静かな筆致で描きあげる傑作6編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shizuka
57
初・津村さん。今まで読んでなかったのが悔やまれるほど私好み。そこはかとなく吉村さんの空気を感じるのはなぜだろう。夫婦だからなのかな。夫婦だから似ているのか、似ているから夫婦になったのか。「死」にまつわる小説6編。『流星』『火事明り』『青波海』の3つが特にいい。その中でも『火事明り』のクマ子の話。まさかとは思ったけど、そうだよね、そうなるよね。齢7歳の女の子。気が強く自分勝手なのでクラスでは恐れ嫌われている。けれど当人はあまり気にせず毎日学校へやってきていたが。家庭の事情に飲み込まれる悲劇。親は選べない。2016/06/05
ASnowyHeron
25
突然訪れる死、外から見えない家族のうちにあるものにハッとするような作品だと感じた。2016/09/08
mahiro
9
死にまつわる短編六話、死とはその人の生き方が現れる事である。黙々と山村に生きて死んだ人の心に秘めた悲しみ、金はあっても孤独な人に群がる欲に満ちた者達、中でもガキ大将のように元気で強くて生き生きとしていた少女の『火事明かり』は今の問題の児童虐待にも通じて心が痛む。2016/12/09
りりり
6
「死」にまつわる6つの短編集。はっとするように訪れる死やゆっくりと向かう死、忘れかけていた死の存在を再確認させられる。2015/12/05
バーベナ
4
久しぶりの友人との交流『病人の船』。出来ること、出来ない事を瞬時に判断しながらも、心遣いを欠かさない。こういうことが出来る婦人は本当にすごいと思う。社交術というのか。こういう方は去り際もさりげないので、鈍感だと気が付かないままだったりするわ。2019/04/22