講談社文庫<br> 新装版 とらんぷ譚4 真珠母の匣

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講談社文庫
新装版 とらんぷ譚4 真珠母の匣

  • 著者名:中井英夫【著】
  • 価格 ¥660(本体¥600)
  • 講談社(2021/01発売)
  • ポイント 6pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062766852

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内容説明

妖美なる陰影を刻む宝石譚、連作完結篇。4部作54篇の賑わしい色彩――きらびやかな宝石の匣(はこ)。だが開けてみると、肝心の宝石は消えうせ、赤い絹布の窪みだけが残っている。この匣は、虚とか不在と名づけられるべき、天与の贈りものであろうか。戦争の傷をその後の人生に刻した三姉妹を美しい宝石箱の虚になぞらえ、妖美壮麗の小説世界を築く幻想文学の傑作。連作「とらんぷ譚」4。
◎「時代が新しいいがたに人をはめこもうとする時、その型どおりにならない異形の者もまた、あらわれる」<鶴見俊輔「解説」より>

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

財布にジャック

49
まずこの「真珠母」というドラマチックな題名に心を奪われました。ただ意外や意外、今までに読んだ3冊とは作風が違って、あら?どうしちゃっの?っと思う程読みやすいので驚きました。初老の三姉妹が主人公で、あちこちに宝石が散りばめられているその美しさと対比させて「戦争」というキーワードを潜ませてあるという、最後に相応しい作品でした。特に長女の由良のアムステルダムを舞台にする物語が個人的には好きでした。このシリーズは間違いなく幻想小説の傑作です。2011/11/22

さっとる◎

34
とらんぷ譚のラストは深紅のダイヤ。戦争とは何だったのかを問いかけられた今回の連作短編は、現実色強め。シリーズ中では一番好みではなかったけれど、やはりこの美文だけでも読む価値有りと思える。戦争に輝かしい夜を盗まれた大正生まれの三人姉妹。美青年が、美しい宝石が、老女となった彼女たちの横を通りすぎていく。滅びゆく大正生まれの女たち。追憶と一時の夢。甘く苦くきらびやかなのに、モノクロ。54枚のとらんぷは妖しく艶やかだった。ジョーカー的二編「影の狩人」「幻戯」が秀逸。2017/06/07

のせ*まり

18
昭和初期が舞台のコーギー小説という印象。年老いた女たちの前に現れる謎の美青年たち。その存在がミステリーを呼ぶ表題作の他、短編2品を加えた作品集。昭和初期の妖しい色気漂う文体にクラクラきてしまう。大学生の時観た映画『ツィゴイネルワイゼン』を何とはなしに思い出した。小学生の時ハマった栗本薫といい、こういう雰囲気好きなんです。でも浸るのに体力がいる、、、2017/01/28

藤月はな(灯れ松明の火)

16
最後のダイヤのトランプを模した物語は宝石とひやりとする現実と時代と宝石の不思議な煌きで彩られた大正生まれの三姉妹の滑稽でありながらも美しく、不思議な恋。絵梨が鏡の中で昔の恋人の面影を見出した話で赤江瀑氏の「八雲が殺した」が無性に読みたくなりました。さて摩訶不思議な幻想世界の幕引きはゲームではオールマイティ・カードのジョーカーを模した2話が担当します。なぜ、トランプがモチーフに使われたのかが分かる「幻戯」にて物語は終焉に至ります。どうぞ、お気を付けてお帰りなさりますよう、お祈り申しあげます。2011/06/22

佐島楓

12
「戦争への復讐」という言葉が印象的だった。私には実感を伴わないし、また、できれば未来永劫伴ってほしくないせりふだ。もう少し感性鋭い時期に読みたかった四冊の締めくくり。2011/11/17

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