内容説明
江戸時代に生まれた怪談集の原点は、ここにあった――。際限のない戦いやそれに続く飢饉に苦しめられ、親が子を殺し、子が親を討つ。現実の恐ろしさが周囲にはびこる戦国の世では、霊だの祟りだの、幻の怖さにはなんの共感も得られないと、従来は考えられてきました。ところが、当時の人々が書き残した資料を丹念に読み込んでいくと……出て来る、出て来る、怪談・奇談の数々。博覧強記で知られる作家の東郷隆が、それらの物語を丹念に集め、現代語でわかりやすくまとめました。本能寺の変の前日に森蘭丸が、死の直前の明智光秀が見たものなど、有名武将にまつわるものから、城の怪奇現象、城下町の噂説まで、怪談・奇談の数々が、皆さまを妖しい世界へお連れします。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
116
人心荒む戦国時代。世を儚むよりは物の化の仕業と納得する方が生きやすかったのかもしれません。幽霊妖怪、はたまたUMA。怪奇現象に超常現象。メジャーな武将から無名の僧まで。怪談奇談の古典ダイジェスト。歴史小説を読むときの豆知識、アナザーストーリーとして役立つかも。本能寺の変の時の明智光秀に起こったドッペルゲンガー現象などは興味深い。光秀を護衛していた武士が『玄琳記』などという書物で語っているらしいのですが、はたしてそれは心霊現象か精神破綻による幻視の類いか…。世相や人物を鑑みるとちょいと趣があります。2020/08/24
nana
79
短編で読みやすかった。空き時間におすすめ。2020/10/13
ポチ
55
戦国時代頃の怪談•奇談•怪異などが多数掲載されており、どれも短くサラサラと読み進められる。武将絡みの話など結構楽しめた。2022/05/25
たいぱぱ
53
「耳袋」などで江戸期に語られていた怪異譚の原点のような話を集めた作品。話は聞いたことある昔話を聞いてるような「ふ〜ん」という内容が多いのですが、壬生寺など知ってる場所が出てくると「境内で長閑にまるき製パン食べてたけど、そんな怪異が語り継がれてるだ!?」とちょっと興奮する。誓願寺の弁慶石とかみてみたいな〜。「仙台って『千体の仏像』から伊達政宗が名付けたの!?」「森蘭丸の森家って、その後大名になって明治まで存続してたんだ!?」など怪異とは全く関係ない、この本で言えば蛇足的な歴史に食いついちゃいました。2023/08/06
イトノコ
28
図書館本。戦国乱世を舞台にした怪奇譚を蒐集。/小説ではなく、実際に伝わっている噺を著者が編集したものらしい。「森蘭丸が本能寺の直前に信長の死を予言する馬頭をみた」「明智光秀が死の直前に己のドッペルゲンガーを見た」「秀吉がかつて斬り殺した妻の亡霊を見た」など、武将がらみの噺は面白い。上杉謙信が晩年に乱心していたと言うエピソードは意外。やはりアル中のせい?京極さんファンにはお馴染みの、駿府城に出た「ほう」や飛頭蛮、舞首なども。他の妖怪噺は小さい頃に「日本昔ばなし」で見たものも?2022/11/07