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内容説明
幼い頃に、父帝の寵姫であった藤原薬子より、寝物語で天竺の話を聞かされていた皇子・高丘親王は、長年、彼の地への憧憬を抱き続けていた。
それから数十年、成長した彼は夢を実現するために、エクゾティシズムに満ちた怪奇と幻想の旅に出立したのだった。
幻想文学史上に屹立する巨峰を、果敢なる漫画家が端正で妖しく描き尽くす。渾身のコミカライズ。
●近藤ようこ ビームコミックス好評既刊●
『蟇の血』(原作:田中貢太郎)『死者の書』上・下巻(原作:折口信夫)『五色の舟』(原作:津原泰水)
『帰る場所』『水の蛇』『月影の御母』『美しの首』『猫の草子』『説経 小栗判官』『宝の嫁』『女神たちと』(共著:河井克夫他)
●コミックビーム 公式ツイッター●
@COMIC_BEAM
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
67
澁澤龍彦の名作を近藤ようこが漫画化。原作は大蟻食いとの会話や単孔の女等からどちらかというと澁澤らしい博物誌的なディレッタンティズムと硬質さを感じたものだけど、近藤ようこの絵でみるとそれらがどこかふわふわとして幻想性を帯びてくるのが不思議だなあ。特に冒頭の薬子が月に向かって玉を投げるシーンとか、蟻塚の玉を取るシーンの奇妙な寂寥感といったら。原作は現実の地でありながら現実の地ではない、地続きでありながら空想の地を旅しているような、どこか山海経を思いながら楽しく読めたが、それが違った形で読めるのは楽しみである。2023/03/03
ぐうぐう
26
近藤ようこが『高丘親王航海記』をコミカライズする。澁澤龍彦と近藤ようこ、このタッグの発想がこれまで自分になかったことが悔しい。それほどに近藤が描く親王の旅の描写は素晴らしいのだ。ストーリーや台詞は原作に忠実でありながら、画や構図はいつもの近藤タッチであり、殊更原作に寄せようとはしていない。それでいて、原作の世界観や空気といったものがまったく損なわれていない事実は、近藤の素質がもともと澁澤のそれと似ているということなのだろう。(つづく)2020/09/13
阿部義彦
25
澁澤龍彦ファン必読。澁澤さんの遺作「高丘親王航海記」を近藤ようこさんが漫画化しました。原作を読んでましたが、ほぼ忠実に誇張すること無く筆を運んでます。薬子との寝物語から物語は始まり。みこの天竺への旅が始まります。一気に物語に引き込まれて夢幻をさまよいます。儒艮のなんともユーモラスな表情が良いですねえ。2021/01/24
りらこ
20
澁澤龍彦の本から漫画、退廃でお耽美?と勝手なイメージでしたが読んでみたら、漫画としても良いし話としても面白い。淡々としていながら、風や水の冷たさや不思議な雰囲気で包まれている。ジュゴン=儒艮なのはこの本で知った。オオアリクイとの哲学的な対話。この世に生きている存在なんて塵みたいなものなのかも。2022/12/24
てんてん(^^)/
12
うちの相方が澁澤龍彦のファンで、原作は家にあるものの未読。まずは表紙の親王の虚ろと言ってもいいような表情にはっとする。9世紀という時代に、天竺へ行こうと決心した人の顔にはとても見えなかったからだ。12歳で廃太子されて、10年後には落飾して僧となった親王には、生きる目的や夢などというものがなかったのかもしれない。それ故に8歳で出会った、この世の人とも思えぬ美しい女性、藤原薬子の強烈な印象が親王の心にずっと焼き付いてしまったのだろうか。(続く)2020/11/02