内容説明
国家とユダヤ人を危害から守るためにあらゆる手段を講じるイスラ エル。イスラエルの新聞記者が政府・軍関係者への膨大な聞き取り から明らかにした、イスラエルで特殊任務にあたるモサド、シン・ ベト、アマンの3機関による、諜報活動と要人暗殺作戦の初の通史
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
54
第二次世界大戦終結後から本格的に始まった、イスラエル/ユダヤ民族を存続させるための血で血を洗う闘い。ホロコーストによって極点を迎えたユダヤ迫害の長い歴史の末に誕生した、世界でも有数の諜報機関における超暴力的な活動の数々を追った通史。淡々と記される記録には、凄絶と言う他ない程に死が撒き散らされている。集中力を欠くと頻出される固有名詞を捉えきれなくなりそうだったが、内容としては現実とは思えないような映画的な作戦の数々に惹き込まれた。かの有名なアイヒマン拉致作戦などのある程度の詳細が知れるのは興味深い。下巻へ。2020/06/10
泰然
24
法や倫理規範で語れない世界の現実とホロコーストを経験した民族の自衛本能が生々しく疑心暗鬼と殺害工作を繰り返し、読者を圧倒するノンフィクション。イギリス統治領時代のエルサレムの血と炎のなかでイスラエルの諜報暗殺活動の幕が開く。全ては悲願の約束の地での国家樹立と民族生存のため。英国との闘争、隠れナチ狩り、中東戦争、PLOとの闘争を通して彼らは世界的に名を覇していく。旧約聖書詩篇の「主よ、なぜ、あなたはわたしを捨てられるのですか」の節が民族的生存DNAの起源と思わせる一方で、悪夢的な殺害の繰り返しが問いかける。2021/08/19
にしがき
13
👍👍👍 タイトル通りのイスラエルによる暗殺の歴史。上巻は、イスラエル建国直前から第一次インティファーダまで。世界史を斜め後ろから見直す感じ。/ホロコーストという出来事と国の場所を考えると、暗殺を一つの政治的問題解決の手段とするのも分からなくは…ない。が、徐々に軍(アマン)や公安(シン•ベト)、諜報機関(モサド)が勝手に行動し始める様は恐ろしい。2021/06/15
本の蟲
13
小説の中ではよく各国の諜報機関、保安組織が登場する。米国のFBIやCIA、旧ソ連KBG、東ドイツのシュタージ、そして近年登場頻度が増えているのが、イスラエルのシャバク、モサドである。公式には一切認めていないため、あくまで非公式のルポになるが、建国以来2700件以上にも及ぶ暗殺作戦の記録。民族絶滅の危機、ホロコーストのトラウマ「どうせ誰も助けてくれない。自分でやるしかない」という不信感。周囲のアラブ諸国全てが敵という状況「やられる前にやれ」という焦燥感。近代国家でありながら、国防の第一手段として「暗殺」(続2020/07/13
FUU
8
読むのにめっちゃ時間かかったけど興味深かった。戦争よりもピンポイントな暗殺の方が世界のためという元工作員の話があったけど結局一般市民も多数巻き込まれている。とにかく邪魔な奴はどんな犠牲も厭わず絶対に消すという作戦の応酬なので作戦遂行の精度は増しても国民生活の安寧にはほど遠い。ターゲットになってる人は迂闊に歯磨き粉すら使えなくなると思うとその他大勢の人生の方が気楽だなどと思ってしまう。きっと日本人はユダヤ人やアラブ人には束になっても敵わないと絶望的な気持ちになる一冊。2021/04/25