内容説明
サロト・サル――後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュ首魁の隠し子、ソリヤ。貧村ロベーブレソンに生まれた、天賦の「識(ヴィンニャン)」を持つ神童のムイタック。運命と偶然に導かれたふたりは、軍靴と砲声に震える1975年のカンボジア、バタンバンで邂逅した。秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺――百万人以上の生命を奪い去ったあらゆる不条理の物語は、少女と少年を見つめながら粛々と進行する……まるでゲームのように。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
484
上巻の前半はクメール・ルージュ以前ーすなわち、シハヌークとロン・ノルの時代―後半はクメール・ルージュ以降。いずれにしてもゲームのルールを決めるのは彼らの側。どちらも賭け金は自分と家族や仲間の命。クメール・ルージュ以降はそれが一層厳しくなり、もはや生き延びるのが奇跡と思われるほど。複数の人物が登場するが、ここではまだ彼らのいずれもが翻弄される側。物語は概ね史実に沿って展開するが、その中で「個」でありえるのは彼らだけである。なお、文体は限りなくアマチュアのそれである。そのことがむしろ逆に成功をもたらしたか。2021/01/13
W-G
351
『地図と拳』が良かったので読んでみた。SFは普段あまり読まないので詳しくはないが、それでもこの作品がジャンルの中でも特異な部類に属するのはなんとなくわかる。カンボジアの凄惨な歴史を描いた硬派な小説を読んでいるつもりになっていると、不意にスーパーナチュラルな逸話が挟まってくるのに、違和感がなく自然に受け入れられてしまう不思議な物語だ。『地図と拳』に登場する人物と、似たような人格造形で似たような末路を辿る者がいて既視感ある部分もある。しかし、それは欠点とはいえず、著者の"色"といえそうだ。2023/04/26
chiru
133
上巻は、ポル・ポト政権下に堕ちたカンボジアの激動を描くクメール・ルージュ編。 主役は、秘密警察の手から生き延びた頭脳明晰な少女ソリヤと、彼女に好意を寄せる神童ムイタック。 ふたりの序章は、大量殺戮が産んだ『命をかけたゲーム』ではじまった。 細胞のように増殖する狂気と暴力と死。不思議な力と名前をもつ子供たち。 殺戮の嵐を、政治的実権の奪取を、ディストピアの物語を、『ゲーム』に置き換えるジェノサイドのボーイ・ミーツ・ガール。理想の未来をつくる鍵は『ゲーム』が握る。下巻へ❕ ★52020/05/02
修一朗
129
満を持してお正月はこの本にチャレンジ。上巻は何といっても1970年代のカンボジアの歴史部分の捉え方だ。シアヌーク王国からロンノル政権を経てクメール・ルージュの支配まで。クメール・ルージュによる支配を「ルールに基づく王国の失敗例」として扱っている視点が冷徹で悲惨で薄情だ。原始共産主義のイデオロギーによる支配はすべて失敗しているのにまた繰り返された。ソリヤとムイタックの家族や村人たちはほぼ皆殺しにされた。クメール人がベトナム人に抱く憎悪についてよくわかった。だからこんなに複雑なんだ。下巻へ。2025/01/05
はにこ
99
世界史を勉強していると現代の歴史はどうしても駆け足になる。このカンボジアの歴史もクメール・ルージュとポル・ポトという言葉のみが私の頭に残っているだけだった。あまりに知識がないのでウィキペディアを見ながら進めた。上が変わっても虐殺が止まらず世の中は良くならない。常に死と隣り合わせで敵が誰かも分からない。そんな歴史に恐れ慄く。下巻でどうなっていくのか楽しみ。2023/08/07




