内容説明
『東京焼盡』の翌日、昭和二十年八月二十二日から二十一年十二月三十一日までを収録。掘立て小屋の暮しを飄然と綴る。〈巻末エッセイ〉谷中安規(全三巻)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
25
正直、鈍い退屈さを感じながら読んだ。むろんこれは私の読書のスピードが早すぎるからなのだと思う。ちびちびと読むことが肝要なのだろう。百閒の書いた/生きたスピードに合わせてゆっくりと……几帳面さを感じた。金の細かい計算とその日の天候、一体なにが起こったのかというメモ。『東京焼盡』ほど混乱が記されるわけではなく、復興の時期の日本の風景と百閒の安定した(?)生活の復活がそれぞれ記されていくので日記的な醍醐味に欠けるきらいがあるが、それでも百閒のファンとしては色々彼の人となりを知られるので面白い。じっくり読んでみる2021/07/11
そうたそ
21
★★★☆☆ 終戦直後からはじまる著者の日記である。「東京灰燼」につながる作品となっている。配給で食いつなぐような毎日でありながら、しっかりと酒は確保してくるあたりが何とも百鬼園先生らしいのである。戦後の東京の状況が伝わってくるという意味で資料的にも貴重でありながら、何よりも著者の語り口がやはり面白い。日記という形なのでぼちぼちと読んでいくのがいいのだろう。2019/02/10
晶
11
スキマ時間にちょこちょこと読むことで百閒先生とともに暮らしているような気分になって楽しい。毎日のお酒の記録を見ているようで、これもまたおもしろい。2019/06/27
澤水月
9
「○○来、原稿の依頼なり、ことわる」。終戦1年余りで数えたら76回も颯爽と断っていていっそ見習いたい(笑)。酒を持ってきたら書く、とか。戦後途端に人気者でオファー殺到の様子わかる。円が封鎖され金周りが一時大変そう。GHQによる「爆撃調査」も飄々とこなす。たった2畳の小屋に来客引きも切らず。「お金はあっても家が建てられない」「物理的に飲食物がない」様子がまざまざ。不如意の弟子には気前よく融通しており百鬼園(しゃっきん)大先生とはまた違う一面。日記も読まれる前提で筆マメに写している2023/02/06
しょうゆ
7
戦後の日記というだけで大変貴重なものだと思う。当時の生活ぶりを知ることができて良かった。戦後という非常時に酒と金のことばかり書いているが、それがかえってものすごく安心する。食いつなぐので精一杯、という時期だろうと飲みたいもんは飲みたいんだよ。特に昭和21年2月5日の日記の、酒が欲しいというわがままを制するつもりは毛頭ない、という宣言が最高。2021/05/02