内容説明
一寸の虫にも五分の魂。それはヒトも同じ。
――宮城県宮城郡浦上町。そこは虫の魂が漂う不思議な町。時に虫の魂は未熟な思春期の若者の魂にひきよせられ、憑いてしまう。そんなとき、町の老人たちは、そっと若者に告げるのだ。「悪い虫に憑かれたら山の上の姫宮さんの所に行きなさい」と。
身も心も小さい有吉羽汰は、ある日突然、身の丈にあわない「おせっかい」をしてしまうようになってしまう。そのことを祖母に相談すると「……悪い虫さ憑かれたんだな」と姫宮さんのところへ行くように勧められるのだった。
だが、そこにいたのは昆虫のことが大好きなだけの、引っ込み思案の女の子で――?
セミの魂に憑かれ、五日おきにしか家を出られなくなった幼馴染み。
バッタの魂で集団化し、学校を支配し始めた女子ダンス部たち。
虫の魂による奇妙な騒動を、羽汰は虫好き少女姫宮さんとともに解決してゆくことになるのであった。
虫と人間、五分と五分の魂が巻き起こす、ちょっと不思議な青春物語。
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あなほりふくろう
23
あとがき「今回はそういったものをいったん捨ててみようかと」いますぐ戻って拾ってこい。うそですごめんなさい。このカバーからどう手代木節が炸裂するか期待してそれはハズされたけど、でも普通に!面白かった。肩の力の抜けた感がある、割とオーソドックスな連作集。有吉の卑屈の裏にあるヒーロー願望とメガネウラのおせっかいがどう話を作っていくか、姫宮さんも大概卑屈ですがこのコンビがおりなす昆虫講座。今はまだヒネリなく素直だけど、今後どうすっ転ぶか(怪しげな笑み)楽しみです(結局そっち期待かよ)2019/08/25
真白優樹
20
虫の魂が漂う田舎町を舞台に、身も心も小さい少年と虫好きな少女が子供達に憑りついた虫の魂が起こす事件を解決する物語。―――小さな魂が導くはちょっと不思議な一度だけの青春。 虫の魂と習性が不思議な事件を巻き起こす中、自分を誤魔化す少年が少しだけ成長するこの物語。 歪で凸凹、だけどどこか真っ直ぐ。そんな等身大な子供たちが事件に振り回されぶつかり合いながら大切なものを見つける物語であり、確かな青春の味が感じられる物語である。古き時代の虫の魂に憑りつかれた少年はどんな虫と出会うのか。 次巻も須らく期待である。2019/08/22
羊山羊
18
すごく甘酸っぱい、ちょっと新伝奇っぽいボーイミーツガール。主人公を取り囲むヒロイン達がまぁ個性的で魅力的。姫宮さんと、主人公の幼馴染の瀬川さんが好きだろうか。虫の魂に憑かれた主人公とヒロイン達を、探偵役の姫宮さんが紐解きつつ解決する。王道だが丁寧で安定感のある筆運びが、読んでいて心地良いのはとても好き。楽しい1冊。2019/12/06
のれん
14
前作実は文体で少し苦手だったが、今作は一人称で中々情けなさ全開で開き直って描いてるためか、印象が大きく変わっていた。 空気になりたいと願う小心者が憑きものにムリヤリ行動させられるコメディもの。 主人公が徹頭徹尾卑屈だが、その開き直りさが一人称、そして心の弱さを現す憑きものを落とす展開にマッチしていた。 主人公の在り方など人を選ぶ傾向はあるが、人情ものなのでオチは良きかな、という感じ。なんでコイツこんなにモテんの? というラノベ界に喧嘩売る疑問さえ浮かべなきゃ良いだろう(笑)2019/09/05
ツバサ
14
虫を題材にして変化球みたいな作品かと思いきや、中身は真っ直ぐ青春のど真ん中をえぐってて、無事死にました。出来れば、夏の間に読んでもらいたいです。2019/08/25