内容説明
戦争は勝ったか、負けたかというチャンバラではなく、その全体にわれわれの社会と同じような原理が働いている――。太平洋戦争の天王山・レイテ島での死闘を、厖大な資料を駆使して再現した戦記文学の金字塔。毎日芸術賞受賞作。巻末に講演「『レイテ戦記』の意図」を付す。
(目次より)
第一巻
一 第十六師団 昭和十九年四月五日
二 ゲリラ
三 マッカーサー
四 海軍
五 陸軍
六 上陸 十月十七日―二十日
七 第三十五軍
八 抵抗 十月二十一日―二十五日
九 海戦 十月二十四日―二十六日
十 神風
十一 カリガラまで 十月二十六日―十一月二日
巻末付録 講演「『レイテ戦記』の意図」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベイス
104
冒頭数章、細かい軍事用語が連なる文体に面食らうが、これに慣れさえすればあとは一気に読ませる。レイテ島で起こったことを、ファクトベースで淡々と綴りつつ、参謀の判断の是非を、日米双方、俯瞰的な見方も交えながら検証する。そこに通底するのは、最前線で戦った兵士ひとりひとりに寄り添おうとする、作者の一貫した姿勢だ。こういう構造だからこそなのだろう、時折差し込まれる、兵士たちの生の声が非常に際立っていて、胸に迫る。これは「戦争の記録」という体裁を纏った「小説」である、という大江健三郎の解説にうなづく。第二巻へ。2023/05/28
nnpusnsn1945
51
今巻は第16師団、レイテ沖海戦と特攻を主題としている。地誌の説明やゲリラの事情にも言及がある。また、参考にした文献の信用出来る点、できない点についても説明がある。作戦のみならず兵士個人個人のエピソードについても語られている。所々に日米軍上層部に対する批判があるのが特徴と言える。読みやすくはないので、NHKの『レイテに沈んだ大東亜共栄圏』を読んでおくと内容をおさえやすい。2022/10/20
おたま
46
8月には戦争に関する小説を読もうと決めていて、今年はこの『レイテ戦記』を読むことにした。読む前にも、この小説を読むことに躊躇した。どうもかなり軍事用語等について詳しい知識をもっていないと、難しいように思われたから。しかし、いつか読みたいとは思っていたので、思い切って読んでみた。読み始めて、やはりかなり手こずった。日本の軍隊とアメリカの軍隊の紹介があり、それが次第に戦闘状態に入っていくのだが、記述はどこまでも詳細だった。〇〇師団の〇〇大隊とか〇〇聯隊とかの部隊名、そしてその進行していく経路が詳しく描かれる。2023/08/18
フリウリ
19
大岡昇平の小説家としての原点は、フィリピン・ミンドロ島で捕虜となった経験である。大岡が本書を書く理由は、レイテ島での日本軍の敗戦が、ミンドロ島での自分の経験に直接的につながっていたからであり、大岡は当初、その経験の意味を理解するために、書き始めたのだとおもう。しかし膨大な文献を調べていくうちに、レイテで何が起こったのかを、生き残った人、残された人、そして死んだ人のために正確に記録する「使命」を感じたのではないだろうか。大岡に、敵・味方の隔てはない。新資料が出るたびに書き直したという執念に敬服します。102025/05/28
塩崎ツトム
19
ほとんど準備不足の中始まるアメリカ軍の上陸。連合艦隊はほぼ壊滅。一方でアメリカ軍の進軍も遅れ出し、季節は雨季に突入。神風作戦。バラバラに吹き飛ばされ、腐っていく肉体。未来を奪われた、声のないはずの死者の声が、積み上げられる数字とともに響く。これでもまだ1巻目。2022/10/21
-
- 電子書籍
- 新宿セブン【単話版】 第9話