内容説明
夢に挫折し、今を無気力に生きる美大生の燕は、かつて一世を風靡した天才女流画家の律子に拾われ、生活の面倒を見てもらうことに……。
引き替えとなる条件は、美味しいご飯を作ること。
自分の過去や絵で挫けた事実を隠したい燕は、言われるがままに美味しい食事を作り、律子と一緒に暮らし始める。
でもそんな彼女にも隠している過去と秘密が……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆのん
76
【Net Galley】絵を描く事に挫折した美大生の燕。美しい顔立ち故に拾ってくれる女性の元を転々とし自暴自棄の生活をしている。彼の武器は美しい顔立ちと料理の腕のみ。行く所の無い燕を拾ったのは有名女流画家。絵を描いて事を捨てたのに絵具の匂いの充満した家で暮らす事に。連作短編形式で書かれていて非常に読み易いが各章の文章が淡々と書かれ過ぎているように感じる。画家と暮らし始めて感情を少しずつ取り戻し始めるにつれ文章にも感情が現れ始める。フレンチトーストを始め美味しそうな食事も読みどころ。2212019/07/18
真理そら
64
絵を描けなくなって休学中の綺麗な顔の美大生・燕は公園で還暦過ぎの有名だが今は作品を発表しなくなっている女流画家・律子に声を掛けられ律子の家に転がり込む。律子の家の間取りが示されているのが親切。料理名に合わせて17編もあるのでサクッと読める。書けなくなった画家と美大生の再生の物語。燕クンは律子さんの教え子という立場では不満なのね、年齢は祖母と孫ほど離れているけれど、律子さんに対する気持ちはたぶん初恋の延長だろう。2023/03/28
野のこ
63
絵を描けなくなった休学中の燕と黄色い絵の具を使わない還暦を越えた律子さん。無気力な燕と天真爛漫な律子さんとの温度差が気になりつつも、彼の作った色彩豊かな料理がとても美味しそうでした。卵液がたっぷり染みこんだ黄色いフレンチトーストに大きなオムレツのオムライス、クリスマスカラーのドリア。文字を読んでるだけなのに視覚を意識した。あと嗅覚も。バターの香りやチョコレートの匂いも吸いこんだ(笑)タイトルの極彩色は違うような気がしました。2020/02/10
はつばあば
50
若いっていいですよね、夢破れた~とはいえめっちゃイケメンな燕。しかも拾ってくれていた女達が料理が来出来なきゃと諭す。(うちの爺さんなんか全くする気なしの現在はヒモ。干物かな😅)繊細でもなんでも拾ってもらえたらありがたいですやん!とちょっと重たい。その上それぞれが秘密を抱えてはる内容にイラっ。でも読み進めるうちに絵描きさんてほんと細やかな神経をお持ちやのに料理ができないやなんて・・・律子さん余程幸せな育ちをされたのでしょうとこれまた嫌味の一つも呟いて頁をめくる。爺さんに食べさせたい料理の数々。続きいきます2024/02/27
itoko♪
48
NetGalleyにて、ゲラ読了。それぞれの喪失や挫折を抱えた2人が共鳴し合うように惹かれ、一緒に暮らすうちにお互いを補完し合い、前に進む力が生まれる。冒頭は寂しいグレーがかった世界だった物語に、絵が描かれ、料理が作られていくことで色彩が生まれ、ページを捲るごとにその色彩が増え、温度や匂いすら感じるようになってゆきました。湯気まで見えてくるようでした。読み進める毎に作品の温度もグングン上がってきて、彩り豊かな料理の描写に食欲も刺激されて、お腹が空いて仕方がなかったです。2019/04/27