内容説明
20世紀前半にロンドンの大銀行の貸し金庫に預けられた謎の回想録。その執筆者はセバスチャン・モラン大佐――ジョワキ戦役の英雄で賭博狂の大物ハンター、そして犯罪王モリアーティの右腕として活躍した傑物であった。犯罪商会(ザ・フアーム)の首魁として様々な犯罪のコンサルティングをこなすジェイムズ・モリアーティが相対してきた個性豊かな犯罪者たちと怪事件。世紀の悪党たちの知られざる活躍を、大胆な発想と魅力的なキャラクターをもって描いた、〈ドラキュラ紀元〉クロニクルで熱狂的支持を受ける博覧強記の著者による破格のホームズ・パスティーシュ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
66
シャーロック・ホームズ退場の引き立て役として仰々しく飾り立てられた悪役として登場し、そのまま幕引きを共にしたモリアーティ教授のその邪悪な犯罪計画がここに証される。自分が解決した事件に寄り添うようにして隠された犯罪が存在したとは、ホームズもムズムズするわけだ(笑)。だがしかしこの悪役からは何やらバットマンに登場するヴィラン達のような独特の狂気を感じる。犯罪を美学とする狂人だ。対して物語るモラン大佐はその破滅型の行動にも関わらず、モリアーティに振り回されてコメディアンの一面を垣間見せてくれる。2022/03/23
HANA
65
2009年、銀行から一冊の手記が発見された。その著者はセバスチャン・モラン…。「教授」の右腕の視点から、彼らの様々な活躍を描いた一冊。もう最初の「緋色の研究」の裏側を描いた「血色の記録」を読んだ時点で、もう笑みが止まらない。そして「あのあばず…もとい「あのひと」の活躍や、赤・・・連盟、そして魔犬。あの探偵の裏側を行くような一味の活躍にまさに巻を置く事能わず。何より本書を彩るキャラ達、主人公は適度に下品でタフ、ハードボイルドを地で行くし、教授は表に出る事は少ないが要所はきっちり締めてくれる。いや面白かった。2018/12/14
Die-Go
44
図書館本。シャーロック・ホームズのライバル、モリアーティ教授とその配下モラン大佐の暗躍を描く。正直なところ、イマイチ。訳文のためなのか、原文の文章力の問題なのか。下巻は読みません。★★☆☆☆2020/11/20
星落秋風五丈原
37
ホームズとワトソンの出会いをモリアーティとモランのそれにトレースするなど元ネタをワルの方から描く。やっぱり悪女のあの女。2019/01/08
geshi
29
犯罪王モリアーティの悪行を右腕であるモラン大佐の書簡の形で描き、様々なフィクションのネタを詰め込んでパスティーシュを超えた娯楽ヴィラン小説になっている。あえてやってる持って回ったような文章がやや飲み込みにくいなぁ。とはいえ、ここまで膨大な数のネタを注釈で解説している時点で流石と言うしかないが。良かったのは冒頭1行の掴みが抜群な『ベルグレーヴィアの騒乱』と、『シャーロック・ホームズの宇宙戦争』を明らかに意識したコンゲームものの『赤い惑星連盟』。2019/04/18