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内容説明
日露開戦。陸軍少佐となった石光は第二軍司令部付副官として出征する。終戦後も大陸への夢醒めず、幾度かの事業失敗を経て、ついに海賊稼業へ。やがて明治という時代は終焉を迎える……。
新編刊行に際し、未公開の手記『思い出の記 放浪生活時代』、短編小説『惨劇の夜の思い出』や秘蔵写真多数、そして電子版のみ、著者唯一の長編小説『曹長の妻』を収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tyfk
3
「いよいよ翌日は慰霊祭という日になっても祭文は出来なかった。懊悩失望の果てに、私はふと思いついて、恥をしのんで第二軍軍医部長、森林太郎(鷗外)博士を訪ねて苦衷を訴え、祭文の執筆を依頼した。」2023/10/07
dexter4620
1
先の大戦で黒子として活躍した著者が、平時の生活に苦しむ巻。その中にも幸せを見つけるのだが、その葛藤や苦労が今も昔も変わらない事なのだと改めて感じさせてくれる。良い家族に恵まれた石光氏は、寄るところがあり大きく慰められたことだろう。最終巻にも期待。2025/04/15
Iwanchu
1
明治天皇崩御で終わる2022/11/29
TTK
0
家族、親戚、友人からの手紙は、将校も兵卒も区別なく、弾雨のもとにあっても薄暗い壕の中でも、くり返しくり返し読んでは丁寧にたたんでポケットに納める。……累々と横たわった戦死体の傍を過ぎると、爆風や弾片にひきちぎられた軍服から、手紙の白い紙がひらひらと風に吹かれていることがある。ちぎれた手紙が秋草の間を、戦死体の間を吹きはらわれてゆくこともある。このような場面に行きあって、私は馬をとめて吹き去られそうな手紙を、飛ばないように死体のポケットの奥に押入れたことが幾たびかあった。 p.542023/08/15
Shinya Ishikawa
0
前半は日露戦争への従軍記で、今をもって多く伝えられる日露戦争史とリンクするものです。生まれたての近代国家日本は国民の愛国心と血の犠牲のもとで独立を保ち、強国へと育まれていったのだという感を強く持ちました。後半は終戦後の著者の私生活の記録で、数々の辛酸をなめた上で最後に家庭の安らぎを知った経過に、安堵を覚えました。叢書3巻までを読み終え、明治という時代を生きた先達への思いが胸にあふれます。先達が抱いた祖国への思いを、自分も受け継ぎ大切にしたいと感じました。2018/03/09