内容説明
愛、絆、情、欲。
執着の虜となった者たちを描く、京極小説の神髄!
藩の剣術指南役を仰せつかる桐生家に生まれた作之進には、右腕がない。
物心付いた時には、もうなかったのだ。二の腕の途中から、すっぱりとない。
これが普通だこういうものなのだと、ずっとそう思っていた。
元服の夜、作之進は父に呼び出された。
そして父は――厳かに言った。
「お前の腕を斬ったのは儂だ」
一方、柔らかで幸福な家庭で暮らす「私」は、何故か、弟を見ていると自分の中に真っ黒な何かが涌くのを感じていた。
ある日、私は見てしまう。
幼い弟の右腕を掴み、表情の無い顔で見下ろす父を。そして父は、
「これだよなあ」
と、暗い声で言ったのだった――。
過去と現在が奇妙に交錯する「鬼縁」ほか、<人と鬼>の狭間を漂う者たちを描いた全9篇。
<解説/東雅夫>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
★Masako★
82
★★★+鬼に纏わる話9編からなる短編集。描かれる鬼は異形のものではなく人の心(歪んだ愛情や欲望、嫉妬心等)が生み出したもの。見えないがすぐ側にあり、だから怖い。そしてどの話も曖昧だ。因果関係がはっきりしない。京極氏が「怪談は怖いものを何の説明もなしにポンと見せつける文学」と言われているが、まさにそんな感じの話ばかりだ。父親が子供の右腕を切断するという話が過去と現在で交互に語られる「鬼縁」、雨月物語を題材にした「鬼情・鬼慕」、顔を半分隠した女につけられる男の話「鬼気」が印象的。ラスト一行にゾクリとする!2018/06/23
優希
68
文庫で再読です。情欲に囚われた鬼と人との関係は恐怖のほかありません。純文学のテイストで描かれた物語の数々は様々な怖さが存在します。「談」シリーズの中では1番怖いような気がします。2018/09/13
佐島楓
66
厭だなあ、と思う。怪談は本来、苦手なのだ。でも、空間にひろがる感情の累積から目が離せなくなる。読んでしまう、否、読まされてしまう。厭だ、なあ。2018/03/04
カムイ
56
ゾック、ゾックする恐さだった。9編の怪談全て良かった😆百鬼夜行シリーズも好きだがこの作品はお勧めしたくなる。😍🤩😍🤩😆2022/02/07
さっとる◎
54
理解できないから怖いのだ。だからそこには鬼がいたんだよ、と。そういうことにしてしまえば大丈夫。ね。でもそうしたら今度は至るところに鬼が。鬼が。微睡んだ狭い視野で明滅する世界がぬらぬらと柔らかい。風が躰を撫でて夜が割って入ってくる。部屋がしっとりとして私は中と外を見失う。それが怠くて甘くてもう厭。眠れば子供の首をたくさん斬り落とす夢をみる。あの人はいつも右腕を斬られ。愛することは欲しいことなので、殺して喰うてみたり。それが幸せか。愛しているよ心配だよ力になりたいでも今じゃない分裂分裂。鬼の棲まうは人の世か。2019/04/10
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