内容説明
夜道にうずくまる者、便所から二十年出てこない男、狐に相談した幽霊、猫になった母親など、江戸時代の旗本・根岸鎮衛が聞き集めた随筆集『耳袋』から、怪しい話、奇妙な話を京極夏彦が現代風に書き改める。
※本書は『幽』一号から六号に「旧耳袋」として連載され、二〇〇七年七月にメディアファクトリーより刊行された単行本『旧怪談 耳袋より』を改題のうえ加筆修正して文庫化したものが底本です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
110
京極夏彦は新作中心に読んでいる作家です。本作の単行本は未読でしたが、図書館の新刊コーナーで見つけたので読みました。魑魅魍魎の跋扈する江戸時代の怪異随筆集「耳嚢」を京極夏彦が現代風にアレンジして蘇らせました。そんなに怖くはなく、少しゾクっとする感じです。表紙のとおり猫も複数登場します。化け猫という概念は何時頃確立されたのでしょうか?巻末の著者と宮部みゆきの対談もGOODです!両者によると「日本は怪談の国」のようです。22世紀になっても地鎮祭は亡くならないんでしょうネ(笑)2016/03/05
優希
77
江戸時代の怪談『耳嚢』から物語を選び、現代風にアレンジしているのですね。現代の怪談として十分通じる要素があると思います。読んでいて鳥肌が立ちそうになりました。ただ、昔風の言葉遣いとアルファベットの名前という取り合わせには違和感を覚えます。元となった『耳嚢』を一緒に織り交ぜているのはいいですね。どんな物語だったかを知ることができます。2018/09/21
佐島楓
57
民俗学的見地から面白く読んだ。狐や猫に憑かれる話や、祟り系の話が多く、そのあたりが怪談のような怖さを感じさせない理由かもしれない。昔はおおらかだったのだな、と思う。2016/04/18
みくろ
52
『遠野物語』に続き、今度は『耳囊』を現代読者に読みやすいよう書いてくださり感謝。しかも今回は原文も付いているので嬉しい。どの時代にも不思議な話はあるんだなあ…。個人的には一番「何処に居た」が怖かったです。あと「何がしたい」「座頭でないなら」も好き。ただ、どうしても気になったのが昔の時代のお話なのにカタカナが出てきたり、登場人物をアルファベットの頭文字で呼ぶ事。現代人に分かりやすく、更に怪談らしい雰囲気にするように敢えてしたのかもしれませんが少し違和感。あとタイトルの付け方も何とかならなかったのかなあ?2016/03/13
瀧ながれ
38
京極訳『耳嚢』。旗本とかなんだかが出てくるのに、人の名前はアルファベットのイニシャルで、「ミーティング」や「チェックしてから」なんて単語が使われていて、時代も現実味もごちゃ混ぜで、奇妙な世界に放り込まれた気分で読んだ。動物が出てくる話が印象的だが、ねこはなんだかどれも不気味。身なりのいい男の姿で挨拶にくる狐と、頭痛に苦しむ男を癒しにきた二匹の子猿神使が好きです。2016/01/31