内容説明
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日常的な飢え、虐げられる女や老人、掠奪やもの乞いの生涯、山や海辺の窮民…ここに集められた「残酷」な物語は、かつての日本のありふれた光景の記録、ついこの間まで、長く貧しさの底を生き継いできた人々の様々な肖像である。
目次
第1章 追いつめられた人々
第2章 病める大地
第3章 弱き者の世界
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
42
飢えも病も戦も、書かれた内容を実際に自らその場で生きることをリアルに想像すると決して耐えられるものではない、そんな話がつぎつぎと展開していくのだけれど、決して悲惨さや酷薄さ一辺倒ではなく、むしろ貧しき人々のしたたかさや強さというものも見えてきて、そのあたりは宮本&谷川ならでは。現在進行形の残酷だった続刊の「現代篇1」(たまたま先に読んでしまった)と比べるから特にそう感じる。◇民話っぽいお話の中に、鎌の刃のようにギラリと光る残酷さもまた仕込まれている。女衒の自分勝手な論理なんて、ふっと現在までつながるもの。2015/06/28
tsuneki526
20
読んでいて頭の中に去来したのは「衣食足りて礼節を知る」という言葉である。貧しい故に人の不幸を祈り、子を間引き、わずかな土地に一所懸命しがみついて死闘を繰り返す。そこに礼節などあろうはずもない。昔のことのように語られている内容であるが、ほんの半世紀ぐらい前まではまだその名残があったので感慨深い。一方で寄生虫は撲滅できたのに、悪習はいまだ形を変えて生き残っていることに暗然とする。今後も人権教育が十分に行われなければ、悪習は時代を超えてはびこり続けるのだろう。2021/08/30
燃えつきた棒
18
『奥山にしおる栞は誰のため身をかき分けて生める子の為』 『子供が老母を負うて捨てにいくとき背なかの老母が木の枝を折ってゆく、子が老母を置いて帰ってゆこうとすると、帰るときの目じるしのために木の枝を折って置いたからと母にいわれて、親の愛情に感じて、また背負うてもどったという話がある。』 2005/07/01
№9
18
本書を編纂した宮本常一という民俗学者はWikipediaで、「柳田國男とは異なり、漂泊民や被差別民、性などの問題を重視したため、柳田の学閥からは無視・冷遇されたが……」とある。本書は、物質的・精神的な豊かさを獲得した「近・現代社会以前」の人々の日常とその社会の様相を、多くの文献から書き起こした「残酷な」(というよりも「過酷な」)話しの数々である。おそらくそれは何も「日本」だけに限ったことではあるまいが、名もなき人々の残した貴重な文献が日本には数多く残っているからこその、興味深い記録の一冊、と言えるだろう。2013/08/09
三平
16
文献、伝承、聞き取りを元に、過酷な環境で生きいてた日本各地の民衆の姿に光を当てた本。教科書では教えてくれない貧しき人々の歴史がそこにはあった。特に驚きだったのは明治時代の村岡伊平治の所業。シンガポールで宿を営んでいた彼は海外に逃げてきていたゴロツキを集め、身を持ち崩した諸君に国家に御奉公する真人間になる機会を与えよう、と訓示をたれる。その為の外貨獲得の方法として提示したのは日本で女性をだましたり誘拐して、南洋各地で女郎として売り飛ばすこと。2015/12/17
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