内容説明
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
明治維新とそれに続く近代化の激変に翻弄される人々。「血税」に恐怖し、入会地を失い、ラシャメンに身売りし共同体の崩壊により流離の境涯に落ちる巨大な群。解説=塚本学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
42
残酷とは民棄つることなり/寄り添わずして/忘却を装う心の冷たさよ/ 静かな怒りを湛えた書物だ。 第一章『過渡期の混乱』、「うばわれた山林」では、木曾谷の人々の困窮の様子が語られ、島崎藤村「夜明け前」を読む上で参考になった。 第二章『ほろびゆくもの』、「流亡の村」では、「三陸大津波」や「十津川くずれ」にもふれられている。 「山海記」の中でこれらの災害にふれていた佐伯一麦は、この本を読んでいたのだろうか?2019/04/25
きいち
30
保障なき社会とはよく言ったもの、それまでなけなしの生活保障を担ってきたムラや武家の共同体が壊れ、代わるものを用意する気など全くない自由主義経済の世が訪れる。新興の不在地主と資本家に富は集積し、一般人は災害が来れば終わり、格差は極大化する。結局「戦時経済」だけが止めることができたわけだ。◇その文脈での、アイヌの人びとへの暴虐の歴史、耐えながら読んだ。アフリカやアメリカでのヨーロッパのならず者たちによる植民地化そのもの、日本人なら知らねばならぬ最低最悪の事績。◇松浦武四郎らの行動と記録が救い、それも欧州同様。2015/09/23
どりーむとら 本を読むことでよりよく生きたい
15
明治時代の最初の時代の混乱が紹介されている。私が社会の先生から、江戸時代,村の持ち物であった村有林が、国の持ち物に組み込まれてしまったという事を聞いた。具体的にはどういうことか分からなかったが、役人が村の土地にすると税金がかかるからということで取り上げたようである。村の人は国のものになっても薪を拾ったり畑をひらいたりするのが許されると考えて国のものにすることを認めたとある。でもその当時の村の人々そんなにバカではないと思う。今であれば詐欺のようなことか力で抑えられたのかどうでしょう。2024/08/23
CTC
14
全5巻の4。前巻読了から4ヶ月を経てのシリーズ通読再開。タイトル通り読み進めるのが辛い、重苦しい内容な訳だが…正直に言って、この4ヶ月間に読んだ社会的にまずまず評価されているノンフィクションなどと較べて、単純に読み物として圧倒的に優れている。テーマ、アプローチ、濃度、構成…書き手も複数だし、一見取り留めない順序で読まされているようなのだが…ひとつひとつの話が主題に対して価値を発揮している。終盤に“百姓市五郎の家”という話がある。宮本常一が自身の曾祖父〜父の3代を書いたものだ。面白くないわけがない。2021/10/31
ndj.
14
御一新のあとさき。民衆の生活は自由度をうしなって苦しくなっただけなのでは?自己責任、の先駆けか。鉄道の敷設によってさびれた村、災害に見舞われて打ち捨てられる村、開拓の失敗、アイヌ問題、そして他国への移民などを扱う。血税、を文字通り、血を絞られることだと勘違いしたという逸話がことの核心を突きすぎていて笑うに笑えない。2018/03/30