内容説明
【電子書籍化にあたり、地図・図版をカラー化しました】
雑木林や畑が広がるいまからおよそ百年前の東京周辺。そこを走る一両編成の「チンチン電車」は、沿線の人口が飛躍的に増えることに伴い、郊外志向の人びとを都市へ運ぶ大路線へと変貌を遂げていきます。
山手線の外側で環状線を目指していた京王電鉄、急速なモータリゼーションで方針転換を迫られた西武鉄道、戦時輸送の観点も踏まえ新潟への延伸を想定していた、のちの東武鉄道。
本書では、鉄道や軌道の許認可に関する戦前の公文書である鉄道省(鉄道院)文書とさまざまな時代の地図をもとに、この私鉄三社の歩みと近現代の日本の足跡を眺めていきます。関東大震災後の郊外志向、帝都復興事業、農村から工業都市への急激な発展、戦時下のレールの供出、職住接近から電車による通勤といったライフスタイルの変化、国鉄や私鉄各社との熾烈な争い、東京への沿線各地の産物の輸送、沿線の観光地開発など。
鉄道省文書とは、いわば鉄道をめぐる人々の声や思い、野心もあれば生活者の悲鳴や憤りであり、地図はその人々の声や思いを形にしたもの、しようとしたもの、潰えたもの、廃れたものの集積であります。
私たちの歴史を沿線からいま一度見つめ直してみませんか。第1巻は東急電鉄、小田急電鉄、つづく第3巻は京成電鉄、京浜急行電鉄、相模鉄道を扱います。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たくのみ
11
「墨痕淋漓たる筆致」で記載された「鉄道省文書」。そこに添付された地図を現在の物と比較しながら、私鉄の歴史をひもとくという今尾さん渾身の作品。鉄道と古地図が好きな私としては、日本の近現代史の流れと密接にかかわってきた東京近郊の私鉄。駅名の変遷と複線化、路線の伸延、吸収合併。すべて国策と結びついていたんですね。地図が読みやすくて、楽しいシリーズです。2015/04/20
のぶさん
2
川越から都内に至る諸鉄道の競争(西武)は、有名な話だが、免許をめぐる申請や反論の文書を見ると、非常に臨場感がある。また、戦時体制における工場労働者輸送を旗印に、路線の延伸が進んだこともよくわかった。東武では伊勢崎線の延伸の経緯が興味深かった。今尾さんの本なので地図が充実しているわけだが、本文と地図を見比べる作業は目は疲れるが面白い。2017/04/01
yo-co
2
今は残っていない構想も鉄道省文書からわかり、今ある路線の敷設経緯を興味深く理解できる。2015/10/12
hal
2
東上線歴30年強、西武池袋線歴10年弱にして、小学生以来地図帳を見るのが趣味で、かつてはちょっぴり鉄の血も入っていた僕なので、面白く読めて当然。京王が東京八王子で、東上線が東京上州なんていう基本情報も新鮮だった。これらの路線のルートの由来と変遷の理由を公文書でたどるという発想が、充分奏功していると思った。もう少し地図が多ければ、より僕好みだっただろう。2015/06/20
Ryuji Saito
1
2015年130冊目。2015/12/15
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