内容説明
吉行淳之介は、新宿赤線地帯の娼婦を題材にした作品群で登場し、1970年代以降一世を風靡するごとく注目された作家である。現代の侍にたとえられ、ストイックな芸術家、女好きの女嫌いなどと評され、その文学は人工的な冷やかさを持ち、虚無と抽象性、研ぎ澄まされた感覚にみちている、と評された。
本書は主要な作品の生成をたどりながら、あらたなる吉行文学の本質を論じた意欲作である。
感想・レビュー
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ワッツ
3
吉行淳之介の著作は随筆を数冊読んだのみ。純文学は原色の街・驟雨で挫折した。この評伝を読み、なぜ挫折したか少しかわかった気がする。タイトルにある抽象の閃き、これがさっぱりわからなかったのだ。ただ単に普段から軽めの物しか読んでないからでもある。吉行淳之介の達した境地を思うと、晩年の作品が自分には合っている気もする。遠藤周作も病弱だったが、吉行は遠藤よりさらに病弱ということを思い知らされた。何とも言えぬ魅力のある人だが、これを読んで魅力は更に増した。久しぶりに吉行の作品を読みたい。2023/11/11