内容説明
ニュートン力学のあとを受けた18~19世紀は、熱をめぐる世紀となった。なぜ熱だったのか? 本書は、科学者・技術者の実験や論理を丹念に原典から読みとり、思考の核心をえぐり、現代からは見えにくくなった当時の共通認識にまで肉薄する壮大な熱学思想史。迫力ある科学ドキュメントでもある。後世が断ずる「愚かな誤り」が実はいかに精緻であったかがじっくりと語られる。新版ともいえる全面改稿の全3巻。第1巻は、熱の正体をさぐった熱力学前史。化学者ラヴォアジェが熱素説の下で化学の体系化をなしとげ、より解析的に熱を取り扱う道が拓かれるまで。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gonta19
57
2008/12/25 セブン&yに注文2008/12/27 届く。2015/9/18〜10/4元駿台生にとってはカリスマ教師である山本義隆大先生の著作。今回は熱力学の哲学的なお話。第1巻は古代からラボアジェまで。浅学で知らなかったが、ロバート・フックがボイルの弟子だったとは!難しいが面白い。続いて2巻へ。2015/10/04
roughfractus02
8
重力なる概念が磁石に由来し、そう呼ばれぬまま議論された科学史を網羅した『磁力と重力の発見』以前、著者は本書で、まだ熱と呼ばれないまま議論されたエーテル(ニュートン)、空気(ヘールズ)、火(ブールハーヴェ)に関する17世紀の仮説と検証を列挙している。これら議論が試行錯誤しながら定量化可能なモデルとして提起するのは、粒子である。本書後半は、18世紀に熱素なる粒子から出発する理論(カレン、ブラック)が、温度と熱量の2概念を導出し、さらに比熱に関する比熱・潜熱と比熱変化という2種のパラダイムに分岐するまでを追う。2019/02/19
BIN
7
熱学史で、1巻はラボアジェくらいまで。普通に物理を学んでいても振られてることもはない熱学の変遷が語られている。マニアックです。今では熱というか温度の大小だが、昔は温かいのと冷たいのが両方存在していたと考えられていたみたい。定性的から定量的な表現に至るまでの長いこと。化学で最初に習うボイルの偉大さがよくわかるところです。熱や火という物質が存在していても不思議ではない。次巻あたりで気体分子運動論登場するかな。2021/10/05
無重力蜜柑
3
素晴らしい。文系だから理科は物理基礎と化学基礎しかやったことがなく、「何となく点は取れるけどよく分からん」状態のまま大学生になってしまった。熱学に関する理論の発展史を思想史的に記述しており、非常に馴染みやすい。ただ、現時点では理科基礎のおぼろげな知識でも議論についていけているが、第三部までしっかり理解できるか不安ではある。2020/06/26
maqiso
3
天文分野では成功した機械論や力学的自然観が多様な現象を見せる化学ではうまくいかず、スコラ哲学の影響を受けた定量的物質論が実験方法とともに洗練されていく様子が細かく見えて、非常に面白い。還元主義から実証主義に移りつつも、熱を物質とみなしてしまうのが黎明期という感じがする。2019/04/07