内容説明
満洲人が漢人を支配してうちたてた清朝。満(マンジュ)、漢、蒙(モンゴル)、藏(チベット)、回(ムスリム)を版図におさめる「盛世」を達成から、20世紀初頭の崩壊まで。朝鮮出兵や日清・日露戦争、あるいは、朝鮮や台湾、モンゴル、ロシアとの関係など、激動する東アジアの視点から大きなスケールで活写する。そこに、現在の問題の淵源が見えてくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
22
「多元が多元のまま共存する体制を築いた」ことを清朝の使命とし、その達成を前半で確認し、後半でその崩壊、つまり、西欧が作り上げた国民国家体制の構築を描く。近代国民国家においては一定の国土・領土という範囲に均質な国民が存在し、領土内の多元的共存を許さない。画一・同化を強いる近代の中で清朝はそのレゾンデートルを失っていく。本書は日中韓を中心に東アジア近現代史を見つめ直すシリーズの第一巻に相応しいオーソドックスなものではないだろうか。2021/07/22
さとうしん
9
内容的には著者岡本隆司氏のこれまでの著書のダイジェストというか、上澄みを掬った感が強い。特に後半部は、清朝における「領土」「主権」等の概念を論じたりと、近刊の『中国の誕生』のダイジェストとなっている。新しい知見はそれほど盛り込まれていないが、国際関係や外交を中心として見る清朝史としてはよくまとまっていると思う。2017/03/27
見もの・読みもの日記
7
清朝は、前代の明がつくりあげた「朝貢一元体制」(華夷秩序)の機能不全に対し、それぞれの地域に適応した関係を個別に選択し、多元的な共存体制を構築することで平和と繁栄を実現したが、「国民国家」という一元体制に敗れ、消滅した、というのが著者の見取図。「清朝が新たに創造したものは少ない」と言われるけれど、私はこの王朝が好きである。2018/06/27
バルジ
6
「中華」の辺境世界から勃興した清朝4百年の通史。社会史と政治史を巧みに織り交ぜ、「大清帝国」の興亡を描く。明における多元社会の失敗した統治を見習い、在地の権力と皇帝の権力を上手く組み合わせ、漢・満・蒙・回・蔵の多元化した社会に君臨した皇帝は乾隆帝の時代に盛世を迎える。しかしその繁栄の裏で滅亡への足跡が確実に忍び寄る。急激に増大した人口に時代遅れとなった統治機構、弛緩する地方統治に伴う相次ぐ大規模反乱と正に亡国の道をひた走る。滅亡の原因は一つではないが、近代世界と華夷秩序の相克が果たした役割は大きい。2022/08/12
nagoyan
5
優。本書は、二度の日中戦争(豊臣秀吉の文禄・慶長の役と日清戦争)を画期とする東アジア秩序の形成と崩壊を清朝の統治者たちの苦闘とともに描く。明の「朝貢一元体制」の矛盾を克服しえたのは、夷であった満州族が中華たらんとした清朝の柔軟な統治にあった。清朝は、清朝に背かない限り在地在来の秩序を尊重し、貿易においても華夷秩序を離れた互市による交易を認めた。しかし、対内的な統治の弛緩、対外的な緊張の中、一方では統治権力の地方委任が進み、他方では吐蒙や新彊の自治は失われた。日清戦争後、植民地化の危機に対応できず倒れた。2017/06/09
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