内容説明
チャールズ・チャップリンがやってくる!! 昭和七年五月、日本中が彼の来日に沸くなか、安吉一家の耳に驚くべき噂が飛び込んできた。チャップリン暗殺――。信念を持つこの稀代の芸術家を殺させてなるものか。世間を混乱させることなくテロリストの魔の手を振り払うため、いなせな夜盗たちが東京の街を所狭しと走り回る。表題作ほか全六編を収録した大人気“天切り松”シリーズ待望の第五巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
176
これも、陰陽師と同じく14年初頭に出ているハードカバーで読んでいるのですが、手元に残す本は文庫本なので購入しての再読です。浅田さんの作品のなかのシリーズでは現在も続いているもので大好きなもののひとつです。6作がおさめられていていつもどこかでほろりとさせてくれるのが浅田節ですが今回も健在です。とくに表題作が映画の好きな私にとっては一番の作品だと感じています。2016/10/17
kinupon
109
もっとこのシリーズが続きますように。粋でいなせな主人公とそれを取り巻く多士済々な人たち。誰もが主人公にとして生き生きと描かれています。2018/01/31
佐々陽太朗(K.Tsubota)
105
全六夜の闇がたり。私の好みは「第二夜・月光価千金」。振袖おこんがめったやたらとカッコイイ。安吉への思い断ちがたく、切ない。ふたつめ「第四夜・薔薇窓」。浅田氏が描く薄幸の女性は、いつだってそっと抱きしめたくなる。あぁ、もう目頭が・・・。さらにもう一つ「第五夜・琥珀色の涙」。こいつはもうダメです。通勤バスの車中でウッ!っと唸った瞬間、涙がボロボロ。かろうじて嗚咽をもらすことだけはこらえたが、溢れる涙を止めることは出来なかった。いつものことだが浅田文学への心地よい(しかし少々みっともない)敗北でした。2016/12/23
たいぱぱ
85
水谷豊さんのあとがきによると「『天切り松』は僕の宝」と浅田さんは語ったそうだ。シリーズ五巻を数えても、浅田さんの宝は衰え知らず。僕を含め現在ほとんどの人が忘れ去ってる「義理と人情」そして「俠気」を堪能しました。これらの言葉はこの物語の為にあるのでは?と思うくらいに胸の奥に物語が染み込みます。一生に一度でいいからこの俠気を誰かの為に示してみたいもんです。でもそう思ってる時点で俠気じゃないか(笑)。チャップリンと五一五事件がこんなの密接な関係にあったとは全く知りませんでした・・・ 2020/09/02
五右衛門
65
今作も粋な心意気で最後までジンワリ読み終わりました。物凄くいい時代なのか、物凄くいい人たちなのか。ついつい松蔵がすぐそこで語っているようでした。2017/07/16