内容説明
北京を首都とする大帝国建設の野望。秀吉の目論見をよそに、唐攻めの戦果はなかなか挙がらなかった。折しも、鶴松を失った秀吉に再び嫡子誕生の報が届く。わが子を溺愛する秀吉は、われ亡き後の政権に異常なまでに執着し、一時は後継とした甥・関白秀次に死罪を申しつける……。時代の寵児の果てしなき夢、狂気を孕んだ末期を描く圧巻の大尾。
感想・レビュー
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姉勤
11
夢シリーズ秀吉篇の完結。確固たる後継の不在という、大事業を一代で成しとげたゆえの弊害が秀吉の眼前に立ち塞がる。天下を統一した迄働いた時とは逆しまに運という力が動く。衰えていく肉体と精神、自身の死後の豊臣家の衰亡への不安が、秀頼への溺愛と再度の朝鮮侵攻を判断させる。誰一人得をしない、先のみえない異国、異国人同士の戦場が、人を荒ませ羅刹に変える。無辜の民の虐殺と復讐、血みどろの海外の大名達と真逆の、花見、茶会、能の稽古に明け暮れる秀吉と家康らの諸大名。それは新たな確執と火種へ。肉体と共に秀吉の夢も奪われる。2014/10/18