内容説明
天才家具修復師・ホービーのもとへと身を寄せたテオ。しかしかつての友との再会が、またもその運命を狂わせてゆく――「21世紀のディケンズ」と称された、ドナ・タート11年ぶりの大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
121
一巻の時には主人公の年齢から、もう少し元気な成長物語かと思って読んでいたら…。立ち直るということは難しいものだな。著者は、予期せずテロにあって突然に最も身近な大切な人を失い、立ち直れない人を見てきたのだろう。立ち直ったと見えて深く傷ついたままの人達を。深い傷が少し治っても、またその上から何度も傷をえぐられる想いをしなくてはいけないのだろう。著者はどういう形で主人公に救いを与えるのだろうか。それにしても、アメリカにおける麻薬の蔓延(これが小説だとしても)には驚く。2017/01/10
starbro
110
ワールドシリーズを観戦しながら、3巻も快調に一気読みしました。NY青春・恋愛編といったところでしょうか?「転」の巻としては、あまりドラマがなかったような気がします。いずれにしても、どういう結末を迎えるか楽しみな最終巻に突入します!2016/11/03
どんぐり
78
美術館爆破テロで母を亡くしたテオの成長物語3巻目。1巻に比して、読むスピードが鈍化している。まだまだ没頭するには程遠いと思っていたら、残り1冊。ニューヨークに戻った少年は26歳で、骨董屋の共同経営者になっている。麻薬とインチキ商売に手を出し、感心しないことばかりだ。すべての原因は美術館から持ち出したあの絵画にあるのか、親友ボリスの再登場によって話しが大きく動き出す。テオとボリス、そしてピッパ、次の4巻でいったいどういう展開になるのか。しばらくまた時間を置いて読むことにする。2016/10/19
ちょき
59
3巻目を読了した。ず〜っとどん底だ。母親を爆破テロで失った報われない少年テオ。復活の時勢は随所にあったものの、人生で最も光り輝くべき結婚期が来ても、うじうじうじうじ。もう何も起こらないか?ひたすらこの叙情詩が続くのか?完全に薬物中毒である。ちょっと離れたと思ったら勝手に人間関係にヒビを作り自ら薬物にはまっていく。そんな停滞感に包まれた中盤、急転直下、あの!ボリスと再会してしまうのである。そして物語がついに疾走を始め、この物語が絵画ミステリーであることを思い出すのである。最終巻へ。2016/10/07
ヘラジカ
37
決して大仰ではないが、繊細で気持ちを入れ込んでしまう程に魅了されるドラマ。あらゆる芸術を用いて装飾されたディテール。堅実だが流麗な文章。これらの要素によって、この小説は「モダンクラシック」というに相応しい作品であることを証明している。2巻の感想で「親しき友人になりそうな本」だと書いたが、少し違った。本に恋をするということがあるならば、この小説にこそその表現を使いたいと思う。2016/07/28