内容説明
「いつでも腹を切る覚悟は出来ている」そう豪語していた同僚・大熊五郎太が本当に腹を切ってしまった。しかも他人の家で、刀を腹に刺したまま、くつろぎ、茶を飲んでいる。切腹の原因である女を連れてこなければ、妻と子に祟るという。大熊の望みをかなえるべく奔走する響新左衛門だった。表題作ほか「湯治宿」「走る俊輔」「悪い芽」「家老舞う」「帰宅」「憑かれた男」「違和感」「うどん」を収録。藩のため剣のため、すべてを捨てて生きる武士の姿を悲哀とユーモアで綴った傑作時代小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kazukitti
1
湯治宿が一番よくある秀行先生の作品て感じだったかなぁ。単行本のタイトルのこのブラックユーモアな感じもある意味あんまし見ないけど、たまにあるコメデイ要素がにじみ出てる感じした。割と正当なホラーって感じのうどんがなんか落語の怪談風というかパタリロっぽかった。つか、その前のお笑い切腹侍の余波で、あんましでぶでぶ言ってるから戸谷一族のご先祖の話かと無駄な先読みしちゃったよw2017/12/09
なおり
1
腹を切ったのに生きて歩いている。怖いけどユーモラス・・・。 夏の怪談話を聞いた気分。暑い夏の気晴らしに良い作品。2013/08/14
ベック
1
本書を読んで印象深かったのは、先を読めない展開の作品が多かったということ。「湯治宿」にしろ「悪2007/08/05
おっとぅ
0
ブラックユーモア短篇集。菊地秀行さんらしくない作品。2017/01/28
ケイト
0
ハイレベルなホラー作品ばかりで、読んでいて興奮したり悪寒が走ったりすることもたびたびでした。哀切な「湯治宿」にはじまってシリアスに行くかと想えば表題作では転調してブラックユーモアあふれている充実ぶりで(父子のやりとりが特にもうおかしいの何の!)、締めくくりの「うどん」はどんぶりの中身の正体におどろかされつつそれを食べる人たちの狂いように戦慄していました。全編とも、短編作品はまるで長編を読んでいるみたいに心ゆくまで楽しめますし、あいまにはさまれた掌編作品も切れ味するどくて居合い抜きのように油断がなりません。2015/10/04