内容説明
なぜ今も昔も日本の「正義」は世界で通用しないのか――国際社会との「ずれ」の根源に迫る歴史シリーズ第一弾。日露、第一次大戦の勝利によって、世界の列強の仲間入りを果たした日本。しかし、戦間期に生じた新しい潮流を見誤り、五大国から転落していく。その三〇年の軌跡を描き、日本人の認識構造の欠陥を読みとく。※新潮選書版に掲載の写真の一部は、電子版には収録しておりません。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
5 よういち
100
非常にデリケートな問題である歴史認識。従来歴史認識問題は外交問題化しないことで日中・日韓の関係が維持されてきたそうだが、1995年の村山談話によってこれが外交問題化することになる。そこには日本人の歴史資料を研究すれば、他国とも共有可能な普遍的な歴史的事実に辿り着けるという楽観的な想定があった。『私たちは過去に関する知識を自分たちの目的のために利用したいと思っている。』との見識もある。本当に必要なのは、感情論やナショナリズムなどに流されず、冷めた目で史実だけを選りすぐる力なのかもしれない。2019/10/24
Shoji
66
ニュートラルです。良くありがちな、日本が悪い、あるいは、日本は悪くないといった偏った叙述ではない。そもそも歴史認識とは何か、もちろんこの本に明快な解答が書かれているわけではない。第二次世界大戦、とりわけアジア太平洋戦争に至る経緯が「複合した原因」であることが歴史認識のコンセンサスが図れない原因である。そもそも、この狭い国内ですら歴史認識のコンセンサスは図れていない。しかも国民に選ばれた先生方の間でだ。勉強しなきゃ。2017/07/05
サトシ@朝練ファイト
29
先に読んだ大沼氏の「歴史認識とは」は、著者が村山談話に携わっただけあり慰安婦問題を含め日中、日韓現代史的側面があるがこちらは主に戦争に関わる近代史を取り扱いやや学術的かと思います。2017/05/27
kawa
15
BSフジのプライムニュースに出演していた著者の発言がちょっと気になって手に取った。学者としてのオリジナリティにはやや欠ける印象はあるが、私のような素人が日本の現代史を学ぶ上で良書だと思う。曰く、普遍的受け入れ可能な「歴史的事実」はない。歴史理論上の色眼鏡で歴史を見ていることに気がつく必要がある。戦前の指導者層は国際政治の現実を見誤っていた。関東軍の錦州爆撃が米軍の大空襲や原爆投下を招いた、等々。2017/02/17
モリータ
13
序章は問題意識の提示と簡単な歴史学史で、日本の歴史教育では「世界の存在しない日本史」「日本が存在しない世界史」を学ばざるを得ず、「二〇世紀の世界で何が起きたかをバランスよく理解すること」ができないということは深く同意する。また第一次大戦=同一文化圏内での総力戦以後の、平和を志向する国際社会の流れを日本がつかめずに重大なずれが生じたということも納得できる。であれば、当然、いわゆる世界史(少なくとも西洋史)と日本史の相互的でバランスの取れた近現代史が本書によって提示されることを予想する。しかし、(続く)2016/07/08