内容説明
「壁を突き破り、空中を飛揚(ひよう)して落ちた」としか思えぬ不可解な死。――はるばるフランスから移築された、奇怪な大蛇の幻影がまとわりつく“オランジュ城館”では、じつは25年前にも同様な事件が起きていた。館主を巡る過去の複雑な男女関係の因縁から、事件の渦中に巻き込まれた人々を、巧妙に操って行く蛇遣いは、果たして誰か――。本格推理の女流が放つ会心作。(『蛇つかいの悦楽』改題)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
7
「一尺屋遥シリーズ」第二長篇。前作に引き続き、往年の本格に求める道具立てを存分に取り入れた意欲作だった。今回は序盤から出突っ張りなだけ探偵役がやや煩い印象もありつつ、国外から移築された城館を舞台に、過去の因縁が新たな惨劇を招く展開は王道的で外しようがない。結果として解決編に入る前までが一番楽しかった、という感覚も否めない点はご愛敬か。後ろ暗さを抱えた人々が吹き溜まるように地方の村へ流れ着く構図には独特の哀愁もあり、情感豊かな結末も好みだった。欠けなく嵌る人間関係をご都合主義と取るか、悲劇的な運命と取るか。2021/11/10
kagetrasama-aoi(葵・橘)
3
一尺屋遥シリーズの第二作目。前作で探偵役の一尺屋に少々魅力を感じたので、この作品でもっと人となりが描かれているかと期待して読んだんですが、あまりその描写はありませんでした。この作品も謎は素晴らしいんだけど、トリックと人物関係がそれに着いていってない感じでした。司氏の本はこれで三冊目なんだけど、同じ印象を受けます。推理のヒントがちょっと曖昧過ぎる気がするし。外国からお城移築するって、私の中では「金田一少年」の話が一番インパクトあります。でも、この話の方が勿論先行してますよね。一番古い作品が何か気になります。2016/10/19
Tetchy
2
オランジュ城館というフランスの城館を舞台にし、見取り図まで付け、しかも冒頭から壁を通り抜けて落下した死体、天を舞う蛇といった島田荘司ばりの奇想から幕開け、作者の本作に賭ける並々ならぬ意欲がひしひしと伝わり、正直、「これは!?」といった期待感があったのだが真相を読むとどうもアンフェアのオンパレードだという印象が拭えない。この作者には「推理」小説は書けるが推理「小説」は書けないのではないだろうか?つまり、この作者には物語が持つ「熱」を感じないのだ。あと題名にある蛇遣い座は全く本書には寄与していない。2009/11/08
Kid A
1
一尺屋シリーズ第二弾。前作の和テイストから変わり、移築された西洋の城館が物語のメインに。 前作同様諸々の理由付けが弱かったり、情報が後出しになっていたり、そもそも何のために入れたのか分からないネタがあったりと、正直粗のほうが目立っている印象を持ってしまった。 しかし、転落のトリックや人間関係の構築にはアッと思う意外性のある部分もあり、暗号に関しても一筋縄ではいかないようにひねりを加えられているのは悪くないのではと思う。 蛇遣い座は……あんま関係なかった。2015/09/05
おもろい於間抜
0
久しぶりにこの作者に出会った。湯布院にたしか住んで著作活動をしていると聞き、ひところデビュー作から追っていた。この作品も湯布院をイメージしながら読んで楽しかった。2017/01/18