内容説明
全部の部屋が別棟で点在し、トイレや風呂場まで三角形でできた奇妙な下宿屋。しかも居住者は芸術家ばかり。持ち主の狭霧(さぎり)吉宗は、姪の結婚相手を下宿人から選ぶことに決めていた。ところが発表の前日、吉宗は心臓発作で急死。その後も怪事件が続発し、姪の木綿(ゆう)は、一尺屋遙(いっしゃくやはるか)に調査を依頼する。――リゾート地・湯布院を舞台に、著者が大仕掛けで挑む驚愕の結末!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
水生クレイモア
5
館ミステリのようでもあり旅情ミステリのようでもある。二重底の劇的な結末が痛快だった。2014/06/14
はんく
2
紛れもない本格ミステリの佳作。新本格ミステリを牽引した数少ない女流のひとりらしい渾身の作品になっている。解説の末尾にもあるように表面的には奇想的な面は見えず仰仰しい殺人もなく地味な内容に思えるがその構成の中にこそ作者の仕掛けた罠があり強烈な奇想が隠されている。幾重にも張り巡らされた奸計は巧みであると同時にやや強引な部分もなくはないが作者本人が自信作だと言い切るだけのものになっていると思う。読者を選ぶ作品の多い作家だが他の作品が容易に読めなくなってしまったのは実に残念で勿体ない。2018/03/23
kagetrasama-aoi(葵・橘)
1
一尺屋遥シリーズの第四作目。世界的に有名な某作品の焼き直し?的な作品。まあ、トリックに特許権は無いから良いんですが。犯罪が壮大で、でも、最終的な犯人の動機が如何にも過ぎて、その落差が面白かったです。司氏は大分在住だったんですね、当時は。だから湯布院の描写が素敵で、一度は行ってみたいと思いました。前作で不憫過ぎた八追純平の消息が知れて、安堵しました(≧▽≦)!2016/10/20
Tetchy
1
「嘘の上塗り」という言葉があるが、この小説の真相が正にその言葉がぴったりだと思った。二重に仕掛けられた本作のトリック、作者の中では結構自信があったのだろうが、私に云わせれば、無理を通すために道理を引っ込めさせ、強引に驚愕の真相へ持って行ったという感じしかしなかった。こういった辻褄併せのような論理の積み重ねが読書の興趣をそそるどころか、ああ、無理をしているなぁという苦労が作品の裏側から透けて見え、なんとも痛々しい。そして、この作家特有の類型的な人物像の乱立。どこに小説としての面白みがあろうか?2009/12/09