内容説明
かつて学生運動に身を投じ、いまはキャリア警察官として埼玉中央署に勤務する二条実房。ある日、二条のもとを元同志であり現役の非合法活動家である我妻雄人が訪れ、自分の恋人である活動家の佐々木和歌子を電車内で殺害したと自首する。だが、我妻は動機を一切語ろうとしない。親友として、和歌子のかつての恋人として、なによりも真相のため二条は我妻と対峙する!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
138
古野作品、再挑戦。読んで良かった。仮想日本国である帝都を舞台に繰り広げられる悲劇を描いた、警察小説であり本格。敵対する革命グループに、リーダーとしてそれぞれ身を置く男女。衆人環視の中、男は女を刺殺、そして自首。一体何故、彼は彼女を殺したか。全編に渡りその動機一点のみにベクトルを向けた構成が実に見事で、その動機に纏わる運命の悪戯に、翻弄されもがき苦しむ人間たちを、濃密に描く独特の描写に引き込まれる。かつて警察官であったという古野氏。刑事の符丁や専門用語の多用、組織の構図、会話など精緻なリアルさもいい。→続2016/08/24
nobby
79
読み友さんアドバイスからの古野作品初読み。1975年舞台だが帝都・内務省・特高などの表現の仮想日本国に混乱。ディズニーランドも既にある(笑)学生運動過激派3人の男女が殺人の被害者・加害者そして捜査する新任警部補となり、そこには恋愛関係のこじれも…ほぼ取調べの場面であくまで動機を探るのに集中させる描写は潔い。後半で一気に明かされる真相には、何が何が見事な伏線回収やら殺害に隠された事実にも感嘆!その衝撃のラストにも体験上想い重なる点が多くせつなさ募るばかり。2016/09/12
ひめありす@灯れ松明の火
46
まほろんにしては読みやすく設定も落ち着いた二条さんのシリーズ。まほろんが元警察官僚という事実を知るとあれこれ邪推出来てなお楽しい。お勧めもしやすい。取調室をおもな戦場に徹底した動機探しが終始続きます。動機を掴む為にこんなに外を駆け回る必要があるのか……。チームお仕事小説として私はずっと読んでいて、みおんちとディズニーランドの件りも次の話を読んでからだと一層愉快です。やっぱり名前が最大のヒントかも。そして何より嬉しかったのは八月の新刊告知!楽しみですー。ただこのシリーズ高価。単行本なんて幾らになるのかしら?2015/07/18
ヒロユキ
23
再読。解説で古野まほろがもとキャリアの警察官だったと初めて知りました。以前単行本を読んだときの感想で、警察小説は普段読まないからわからないがとてもリアリティを感じた。まほろがこんなのも書けるのは意外だったと言っていたのですが、そりゃそうなるのか(笑)この作品は天帝シリーズのフードニット、イエ様シリーズのハウダニットだけでなく、まほろはホワイダニットも描けると示した一作だと思います。2015/07/15
トリプルアクセル
14
約10年振りに古野先生の本を読了。天帝シリーズは衒学的な文体が合わず、その後敬遠してしまっていた。今作も個人的には苦手な設定だったが、天帝シリーズに比べると大分読みやすかった。警察内部の描写はさすがにリアル。もう少しコンパクトだと良いが、動機に焦点を当てた構成上仕方ないところだろうか。伏線の回収が見事だった。2017/08/02