内容説明
大坂冬の陣に西上してくる徳川家康の首をねらうため、霧隠才蔵らは駿府城下に潜入し、徳川の忍者、風魔獅子王院たちと血闘をくりひろげる。そして、駿府城内にしのび込んだ才蔵は、家康の寝所の天井裏に立つのだが……。人間性を抹殺された忍者たちの中で、いかなる組織にも属さず、ただひとり人間らしく生きようとした才蔵の悲哀を通して、“忍び”の世界を現代の眼で捉えた長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
155
下巻もノンストップでした。面白かったなぁ。才蔵は一貫してハードボイルドでした。北方謙三が書くとこれもまた面白いのではないかと勝手な想像を楽しんでいます。 また、伊賀、甲賀ばかりが注目されがちですが、風魔忍者の登場がとても印象的で(風魔の成り立ちに係わる推測も結構面白かったです)、風魔を題材にした小説を読みたくなったので探そうと思います。 2018/06/10
とん大西
120
あぁ、やはり司馬遼太郎が好きだぁ…などと盲目的なバイアスがかかってるのは自覚してますが…。座りの良さは、やはり格別です。凄腕霧隠才蔵のケ・セラ・セラ忍者武芸帳。佐助と組んだ家康暗殺も未遂となり、ついに始まった大坂の陣。行きがかり上、豊臣陣営につくこととなった才蔵。きまぐれだけど強い、アバウトだけど凄い。決して歴史の表舞台に立つことない忍の鳴動。が、真田幸村に応え、後藤又兵衛と語り、家康に恐慌をもたらした才蔵の忍のさま。闇の中で確かに才蔵は歴史の歯車となっていた。燃える大坂城。才蔵、最後の大仕事が粋です。2020/03/24
優希
92
才蔵が格好良かったです。家康の首を狙うために、風魔の忍者たちと血闘を繰り広げるところなど、手に汗握ります。波乱の歴史が繰り広げられるのみならず、女たちも妖しく絡むのに引き込まれました。人間性を抹殺された忍者たちの中で人間らしく生きようとした悲哀から「忍び」の姿を見ることができました。2018/08/14
pdango
75
★★★★★名場面につぐ名場面、飽きることなく、才蔵や佐助のかっこよさも堪能。なにより最近、真田幸村ゆかりの場所へ行ったこともあり、格別な臨場感のなかで楽しめたのも良かった。ラストは、自分が隠岐殿になった気分(←あつかましい)2019/05/02
ehirano1
70
「よいわ。徳川が勝ち、豊臣がほろびるのも天命であろう。この城にきて、そのことがよくわかった。腐れきった豊臣家が、もし戦に勝って天下の主となれば、どのように愚かしい政道が行われぬともかぎらぬ。亡びるものは、亡ぶべくしてほろびる。そのことがわかっただけでも、存分に面白かった(p367)」。亡びの美学ではなく亡びの必然性を述べたのが印象的でした。“存分に面白かった”とは如何にも才蔵らしかったのではないかと思いました。2019/02/16