内容説明
海の自然とちっぽけな人間の闘いを描いた実話を元にした大漂流記。
天保3(1832)年、知多半島の小野浦から江戸に向かって出航した千石船宝順丸は、遠州灘で嵐に遭い、難破してしまう。1年2か月間の漂流ののち、宝順丸は奇跡的に北アメリカのフラッタリー岬に漂着する。14名いた乗組員はこのときすでに、10代の音吉、久吉、そして舵取りの岩松だけとなっていた……。
強大な自然にも負けない人間の強さを描いた大長編。
1983年(昭和58年)に松竹で映画化。西郷輝彦、竹下景子の主演で話題となった。
「三浦綾子電子全集」付録として、著者がキリスト教関係の雑誌「けつたん」に載せたエッセイを収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
92
実話をもとにしている物語なんですね。お米を運ぶ千石船の航海で激しい嵐にあった中で生き残った心優しい音吉、明るく前向きな久吉、頼れる岩松。遭難という壮絶さは不安や焦燥、恐れがあったことでしょう。奇跡的に助かったとはいえ、まだ苛酷な運命が待っていそうです。この先どうなるのか。続きも読みます。2016/02/17
レアル
69
江戸時代の史実に基づいたお話。主人公音吉の乗った船が遭難した。その嵐の中に浮かぶ船の様子や、その窮地を乗り越えようとする船乗りたちの漂流物語が描かれている。ただ著者はクリスチャンという部分を勘案すると、著者の作品の「塩狩峠」や「氷点」のように、物語の行く末よりも人の心に重点を置いた作品なのかもしれない。時代柄、伊勢湾地域を主に仕事をしてた船乗りたちに日本以外の世界地図の知識もなかっただろうし、さぞや不安と恐怖だったに違いない。ようやく助かるも更なる試練が待ち受けてそう。次巻へ。2016/09/20
ソーダポップ
42
天保3年(1832)知多半島の熱田から、千石船の宝順丸が14人の乗組員を乗せて江戸に向かって出港した。しかし遠州灘で嵐に遭い遭難してしまう。1年2ヶ月もの間漂流して11人もの乗組員が壊血症で死亡する。そして1833年末から34年初頭北アメリカのフラッタリー岬に生き残った音吉、久吉、岩松3人が奇跡的に漂着した。その頃故国日本では、天保の大飢饉が始まっており、この大飢饉が音吉たち自身の運命を大きく狂わしていく。運命に翻弄されながらも希望を持って生き抜いていく男たちの姿を描いる。2021/07/03
piro
38
鎖国の世の江戸時代、熱田を発ち江戸への荷を運ぶ千石船宝順丸が遠州灘で嵐のため遭難。14人の船乗りを乗せた船は潮流に弄ばれる様に外洋へと流されて行きます。想像を絶する過酷な漂流。ひたすら水平線しか見えない大海原。飲み水が限られ米以外の食糧が欠乏する中、ある者は病に倒れ、またある者は気が触れる。長い漂流に、読んでいるこちらも強い絶望感に襲われました。そんな中最年少の音吉の健気さがとにかく心に残る。頼り甲斐のある岩松、幼馴染の久吉らの存在に励まされながら、許嫁を想い、最後まで諦めない音吉の強さにただただ感服。2020/12/08
ちょん
31
これが実話をもとにした話とは。綺麗な心を持つ音吉、前向きで明るい久吉、頼りがいのある岩松。それぞれの心根がとても尊敬でき、人間というものはこうありたいと思わせてくれる。中巻が楽しみ。2015/05/24