内容説明
運命や自然に翻弄される人間の愛とエゴイズムを描く長編小説。
貴乃と孝介は結婚を誓い合った仲だったが、貴乃に恋慕する完治の策略によって、孝介一家は村から追いやられ、貴乃は強引に完治の妻にさせられてしまう。それから10年。樺太に渡り、金持ちになった孝介が貴乃と完治の前に現れ、完治の妹のあき子を嫁にほしいと告げる……。運命や自然に翻弄される純愛を通し、十字架を背負った人間たちのドラマを描く長編小説。
1977年(昭和52年)にテレビドラマ化され話題を呼んだ。
「三浦綾子電子全集」付録として、1977年のTVドラマ化に際し毎日新聞に載せたコメントを収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
160
「天北原野」とは北海道の北部、天塩(てしお)川と頓別(とんべつ)川の下流から北の平野のコトであり、その近くに住んでいる自分としては、やはり是非読んでみたい、いや、読むべき作品だと思っていました。とても今から45年ほど前に書かれた作品とは思えぬ違和感のなさは驚愕です。たくさん女流作家さんが輩出されているなかで、改めて三浦綾子さんは別格であり、別次元なんだなと。これでもかこれでもかとめまぐるしく事態が変わっていく展開にページを捲る手がとまりません。五百頁弱の大作ながら、イッキに読めてしまう筆力は段違いです。2021/06/03
遥かなる想い
77
戦前の樺太を背景に,貴乃と孝介の悲恋を軸に物語は 進んでいく。三浦綾子の小説には,『氷点』のようなある種毒を含んだ人間の罪を問う小説と, 『塩狩峠』のような人間讃歌とも呼べる小説があるが、本小説は後者に属するもの。それにしても、昭和初期の人たちは何と忍耐強いのだろうと最近 よく思う。恋のしかたも本当に静かで、でもそうであるがゆえに,限りなく 清冽な感じがする。
Smileえっちゃん
56
古本処分の為の再読本。北海道の自然を舞台に書かれた長編本(上)貴乃と小学校長の息子孝介は結婚を誓い合った仲だが、貴乃に恋する完治の恐ろしいたくらみによって、村から追われ、樺太へ…完治は 強引に貴乃を妻にしてしまう。随分前に読んだので今とは感じ方が違っています。なぜ好きな人がいるのに、嫌な人と結婚するの? なぜ?なぜ?と思うことが多く(中)(下)巻に進みます。2020/07/13
TATA
38
三浦綾子さん初読み。これは確かに大河小説。戦前の北海道、愛を育み結婚間近の二人を引き裂く憎悪。そして舞台は樺太へ。引き裂かれてもなお、お互いに惹かれつつも決して報われることもなく更に複雑かつ困難な運命がまちかまえる。戦争の影が忍び寄ってきたところで下巻へ。感想は下巻終了後に。2018/03/11
カーミン
36
若い頃から何度も読んだ本。それでも面白い。ハマベツに住んでいた孝介と貴乃は結婚するはずだった。しかし、貴乃を何とか手に入れたいと企む完治に、貴乃は犯されてしまう。また孝介は完治が起こした火事が元で樺太に渡る。犯された貴乃が書いた孝介宛ての手紙に、孝介は返事をくれない。そして、諦めた貴乃は、完治の妻となる。女性の操が尊ばれた時代、操が奪われたというだけで、人生が変わることが多々あったのだろう。浮気な夫にジッと耐え続ける貴乃。その強さをなぜ自分が幸せになる方向へ向けなかったのか……。2025/12/14




