内容説明
予備校生のノートに記された地図と、そこに書き込まれていく×印。東京で生活する少年の拠り所なき鬱屈を瑞々しい筆致で捉えた青春小説の金字塔「十九歳の地図」、デビュー作「一番はじめの出来事」他「蝸牛」「補陀落」を収録。戦後日本文学を代表する作家の第一作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
57
読了まだ4作目ですので偉そうなことは言えませんが、読み進めるにつれだんだんと私が知る中上健次になっていく。作家の原点を見るような思いが致しました。放電しているような文章。業としての文学。心もヒザもワナワナして、今ちょっと押されたらコケそうです私。2015/08/21
Vakira
43
【一番はじめの出来事】思春期前夜の少年時代あるある。森の中に僕らだけの秘密基地を作る。実際、僕だって森の秘密基地に憧れた。しかし、住んでいた場所は都会だったので大きな公園はあったが森はなかった。ある時、城跡の埋められた戦時中の防空壕の入り口が露出しているのを発見。僕らだけの秘密基地にした頃を思い出した。さてこの物語、一番はじめの出来事である。出来事とは無邪気に遊んでいた少年が大人になる事。それは一般的な成長の通過儀礼ではない。いつまで考えても解けぬ命題であり「永遠の出来事」でもあったのだ。2023/06/07
starbro
43
中上健次という作家は知っていましたが、まともに作品を読むのは今回が初めてです。40年以上前に書かれたとは思えないほど、生々しくエネルギーに満ちた作品集だと思います。さすがに処女作品集ながら芥川賞候補に挙げられたのも納得です。尾崎豊の「十七歳の地図」が中上健次の「十九才の地図」のオマージュだと言うのも今回初めて知りました。次回は「日本文学全集23中上健次」を読む予定です。2015/03/30
musis
32
現在と過去が身体を縛り付けて視界を狭くさせている、もがいても先が見えない暗さを感じる。主人公たちは、もがき続ければ状況から抜け出せるのだろうか。じわりと湿った霧のなかからのぞく憎しみ。気持ちを制御できず他人に憎悪をぶつけまわっている姿は、本を読んでいるぶんには、こちらも苦しくなる。現実では出来ない、しない、抑えている自分が共感する部分も多々あったりする。この人たちの将来を知りたく思った。ちゃんと生き抜けたか、兄さんみたいに状況に呑まれなかったのか。ぐん、と背筋をのばして生きていてほしい。2015/03/02
ミエル
30
夏になるとなぜか読みたくなる中上健次作品、今年は初心に帰ってこれを久しぶりに再読。持て余すモヤモヤする感情を倦怠と焦燥として写実的に表現してる点、若者ではなくなった今読みかえしてもお見事。世代独特の空気感、仄暗いニュアンスは癖になる。また何年後かに再読する予感。2016/08/04
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