内容説明
幕末の京都で道具屋「とびきり屋」を営む真之介とゆず。ある日、坂本龍馬から持ちかけられた赤絵の鉢の商い。真之介がとった秘策とは? 若宗匠からある大事な品を取り返すために夫婦で奮闘する「うつろ花」ほか、珠玉の6編を収録。若い夫婦の成長を軸に、京商人の心意気を描いた「とびきり屋見立て帖」待望の第3弾。惜しまれつつ逝った山本兼一氏が手しおにかけた、感動のシリーズ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
119
シリーズも第三弾となり、ますます味が出てきた。真之介とゆず夫婦が力を合わせて生きていく姿が清々しい。読んでいて心が洗われる気がする。そうした気になるのはやはりゆずの存在によるところが大きいだろう。育ちのよいお嬢さんらしく諸事におおらかでありながらも凜とした様をみるに付け、自然と読み手の心が前向きになっている。邪な壬生浪・芹沢鴨や嫌らしい茶道家元の若宗匠の存在でさえ、ゆずの気が颯爽とした一陣の風となり、その醜い部分をさっと吹き払う心地がする。妻をめとらばこのような人をと夢見る姿がここにある。2016/06/02
Shinji Hyodo
45
しまった❗️読む順序を間違えた。しかし、これはこれでとても興味深く面白い内容で飽きずに読めました。時代は幕末。風雲急を告げる京に在って道具屋『とびきり屋』を営む真之介とゆずの若夫婦がその目利きと知恵と時に度胸で店を切り盛りして、同業の老舗大店や壬生浪達と渡り合う。真心と正直を忘れずに商いすれば道は開ける。ええ〜話しどすな〜〜(^^)いきなり竜馬が登場してびっくり(^^;;出てくる茶道具や器の様子は今ひとつ思い描けなくてちょいと残念、他のシリーズも読みたいと思います…がその前に作者の御冥福をお祈り致します2015/01/17
ユメ
40
京の情勢はますます混迷を極める。そんな中でも、真之介とゆず夫婦は日々の暮らしと商いを何より大事に生きている。侍たちのごたごたを「くだらない」と断言し、日常を尊ぶ彼らの地に足の着いた強さが好ましい。そして、これまで一貫して嫌われ役だった若宗匠の株がちょっぴり上がるひと幕も。芹沢鴨に対して「風流を愛する人情の機微がわからんと、なにが侍や、なにが浪士組や」と啖呵を切ったのには思わず拍手した。幕末の志士たちを英雄扱いせず、こういう京町人の心意気やよしとする視点がこのシリーズの大きな魅力だ。2019/01/20
はにこ
35
微笑ましい「とびきり屋」夫妻。時に困難に立ち向かいながらも上を向いて進む姿、道具に対しての思いが素晴らしい。前作まであまり好きではなかった若宗匠だが、意外と?純粋にゆずのことを好きなんだなぁとちょっと同情。芹沢は相変わらず駄目だぁ。もう関わらないで。。諸田玲子さんの解説で作者がすでにお亡くなりになっていることを知った。素敵な作家さんだと思っていたので残念。2021/10/13
Tadashi Tanohata
32
山本兼一にほのぼのした若夫婦を描かせたらこうなるのか。幕末京都の道具屋の若夫婦と坂本龍馬、桂小五郎や壬生浪とのからみを、骨董品を介して紹介する短編6編。骨董品には興味はないが、七夕にそうめんを食べながら読了、器は別にして風雅にて候。2020/07/08