内容説明
アメリカ兵と日本人女性との間に生まれたミッチとカズは、ママに引き取られて暮らすことに。また、ママのいとこの子であるヨン子とも幼馴染みであった。ある日、オレンジ色のスカートをはいたミキちゃんという子が池で溺死する事件が起こる。彼らは成長し、それぞれの人生を歩み始めるが、数年に一度、オレンジ色の衣服を身につけた若い女性が殺害される事件が起こり、彼らは過去の記憶に苛まれるのだった……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けい
76
太平洋戦争直後に生まれた、登場人物達の人生を通して戦後の日本を問う物語。世界中の様々な出来事を交えながら、登場人物達が小さい時に起こった事件の根底を辿って行くのですが、時系列、語り部が切り替わり頭の中がかなり混乱。正直難解でした。文章が美しく、一見読みやすいのでスラスラ読めてしまうのですが、その中に示される内容を紐解くのが大変。安易に読みだしてしまったが歯が立たない。忘れない、自分自身にも背負うべき罪がある。その事だけは胸に留めておこう。2014/11/25
翔亀
53
ひがな一日、読書にふけり、今ここに続く日本の戦後史を生きた"大家族"の、途切れ途切れの極私的な思い出話に、しみじみとつきあいながら、知らず知らず人間の歴史に思いを馳せていた。この"大家族"の身近に感ぜられながら、なんと日本から遠く隔たっていることか。大家族とは、占領時に米兵と日本人女性の間に生まれた孤児達が、私設のホームで育てられた、その孤児達と育て親の女性達。ある者は米国の里親に引き取られ世界各国へ散らばるが、大人になっても絆が強い。そうした彼らの3.11迄の人生記だ。これはもうこの世界に浸れればよい。2016/09/19
KEI
43
3.11を経験して書かれた小説という事と、表紙のドームが気になって手に取った。私は果たして作者の思いは読み取れたのだろうか? 登場人物は敗戦後の占領下の元で生まれた混血孤児。そしてずっと彼らの人生の中で囚われて来た少女の死の謎に対する罪悪感。戦後世界を蝕む様々な出来事が時間の流れも無く、絡み合う。そして3.11の放射能汚染。救いようの無い人の行く先を【悲惨な現実の中で生き抜け】と言う言葉と、里子として世界中に散った孤児たちが支え合う姿に救われる。しかし、忘れたり、無かった事になりつつある事への警鐘とも。2017/06/14
八百
29
美しくも難解…スミマセン、カッコつけました、実は何もわからなかったのです。最近で言えば「abさんご」に匹敵する読みにくさ、でもあっちは単に文体だけのことだがこちらと言えば語り手も時系列もころころ変わり気の抜けない挑戦状の如き作風。中盤にてやっと馴染んで来たかの想いも完膚なまでに打ちのめされる。戦争、原爆、チェルノブイリ、9.11.そして3.11…言わんとするメッセージは理解出来るのだがそれをどう咀嚼すれば良いのかがわからない。きっと力不足なんだろう。結局わかったことは著者が太宰の娘だということだけであった2014/05/03
yumiha
27
表紙の写真は、アメリカの核実験の汚染物質を集めた「ルニット・ドーム」。第一章と最終章には、3.11が描かれ、放射能を「煮凝りのような銀色のかたまり」と表現されている。そこから触発されて、混血の戦災孤児たち(今は60歳を越えている)の逃れられない記憶、よどんだ池に浮かぶオレンジ色のスカートが始まる。カズもミッチーもヨン子の互いに強い繋がりゆえに、その場にいない誰かを空想し会話したり、さらに時系列に沿って話が展開しないので、読み終えても脳内混乱。父親はほとんど不在ちゅうことだけは分かった。2016/06/21
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