内容説明
売れっ子女郎目指し自ら人買いに「買われた」あげく芸妓となったフミ。初恋のひと山村と別れ、パトロンの黒谷と穏やかな愛を育んでいたフミだったが、舞うことへの迷いが、彼女を地獄に突き落とす――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
69
第2巻に入り、第1巻から9年が経過した。大陸の大自然を背景に、舞台はハルビンからウラジオストク、ハバロフスクと移り、物語はフミの一代記の様相が濃くなって来た。フミはロシア革命の大きな時代の流れの中で、様々な事件が起こるが、芸妓として舞踊に徹底して打ち込みその情熱がひしひしと伝わってくる。舞を極めようとするフミの姿に、この巻ではパトロンの黒谷との関係も添え物程度だった。大陸に渡った一女性の話から始まった物語が、ますます大きくなっていく予感を思わせる。引き続き第3巻に入ります。2017/05/03
hrmt
37
酔芙蓉が無くなった後も黒谷のもと芸妓として哈爾濱に留まったフミ。忘れたはずの山村への想いがフミの心を揺らす。孤独を知る者が、叶えられないと知りながら一番に求めるものより、求められる幸せを選ぶことを責められない。そうして得られたものもある。極限になってやっと到達した至上の陶酔。無心の境地に訪れた唯一絶対の真理。神仏に寿がれた舞姫が、それでも本心から求めたものを追い求め、芙蓉を捨てフミとして生きることを決めた力強さが眩しい。自分自身を嫌悪し続けやっとできた決断なのに、間に合わなかった黒谷がただ憐れだった。2017/03/22
りー
28
姉妹のように育ったタエがベルリンヘ旅立ち、1人残されたフミは、黒谷の元で芸妓として「舞」を極める道を探す。このまま芸術の話になっていくのかと思いきや、物語は急転直下。波瀾万丈…ってここまで波瀾に富んでいて良いのか。全く物語の方向が変わってしまった。山村の悪い男っぷり、黒谷のやっと突き抜けた悟りっぷり、どちらをとっても苦労しかないのに、逞しい主人公。単純に元気で可愛いだけではなく、自分の中の虚無と常に戦っているところに深みを感じます。さて、次はどうなるのかな?2021/05/09
Mimimi
23
タエが女の幸せを手にした反面、フミは芙蓉としてのみ求められる日々。その唯一の舞いすら手からすり抜けてしまって…どうなるのかハラハラしましたが、鷺娘、凄かった。描写しかないけど、実際に見たい天女の舞い。でも結局フミとして一歩を踏み出した彼女が今後どうなるのか、非常に気になります!そして芙蓉は武臣との方がお似合いなんじゃないかと思いました(笑)黒谷の旦那も動くのが遅くて…可哀相だけどちょっと笑えてしまった。2013/10/23
Haru
22
何度もピンチに陥るヒロインに危機一髪で助けが入る昼ドラのような展開に一気読み。シリアスな部分とコミカルな部分がバランスよく描かれているのが須賀さんらしい。前巻の感想でも書いたが、話自体はそんなに深くはないけれど、混乱の中で自分を見つめながら必死に生きるフミの心情や、日本・ロシア・モンゴルが入り乱れる歴史背景もしっかり書かれているので読みごたえは十分。個人的には黒谷の弟くん武臣が気になる。最終的にフミとくっついたりしないだろうか。加えて、芙蓉一世一代の舞の後の武臣と碓氷のやり取りがなかなかツボでした。2013/09/01