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内容説明
言葉,風景,人たち,本…….この国の未来にむかって失われてはいけない大切なもの.20世紀の終りから21世紀へ,そして3.11へという時代に立ち会いつつ,再生を求めて,みずからの詩とともに,NHKテレビ「視点・論点」で語った17年の集成.
目次
目 次
国境を越える言葉
大切な風景
街を歩こう
挨拶の言葉
異世代と同時代
会話と対話
古い本も読もう
再考再生の再
記憶を育てる
受信力の回復を
第一回桑原武夫学芸賞
時間のなかの故郷
気風の問題
「退屈」の研究
遠くを見る眼
語彙の行く末
他山の石とする
長い一日の終わりに
使い方の哲学
「場」をつくる
名詞の問題
絵本を読もう
一冊の本の話
本に親しむという習慣
自分の辞書をつくる
言葉はコミュニケーションの礎
訳詩のたのしみ
「眺め」の大切さ
なくてはならない場所
風景という価値観
器量という尺度
一日の特別な時間
清渓川の空
不文律を重んじる
樹が語ること
日々をつくる習慣
故郷とホーム
読まない読書
変わった人
風景が主人公
死者と語らう
対話から生まれるもの
五十年目のラヴレター 悼辞に代えて
猫と暮らす
蔵書のゆくえ
叙景の詩
うつくしい本の必要
文化とは習慣である
詩五篇
一日を見つめる
海を見にゆく
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
143
未来に向けて決して失ってはいけない「なつかしい時間」。あなたの心に残る風景、日々の変化に気づく心、自然に触れたくなる私たちの心。見えているが見えていないものに気づく大切な時間。なつかしさを感じるとき、私たちは自然が日々描く風景に魅了されている。本の魅力。絵本は現実の風景ではなく、現実をじっと見つめて目を閉じて初めて見えてくる風景です。絵本を必要としているのは、子供たち以上に大人たちなのかもしれない。本を開くということは、心を開くということです。読書をする日々は、なつかしい時間を私たちの心に描いてくれます。2020/07/26
KAZOO
143
詩人である長田さんが、NHKの番組で17年間にわたり語ってきたものを本にしたものです。結構本にかかわるものも多く古い本を読もうとか絵本を読もうとか1冊の本の話など読んでいて楽しくなります。私も比較的岩波新書を読んでいるのですが、長田さんについては比較的最近読み始めたものが多くあまり注目していませんでした。このような内容は私好みです。2016/10/29
新地学@児童書病発動中
117
詩人の長田弘さんが、NHKの「視点・論点」で語った原稿を本にまとめたもの。長田さんの詩も多く収録されている。詩の中ではあまり書かれることのない社会批評が前面に出ているところが特徴。詩人は言葉に一番敏感な人であり、現代の社会で普通の言葉の力が衰退していることへの懸念が感じられた。逆から言えば、この本を読むことで、風、日射し、花、樹といった身近な言葉の中にある美しさと輝きをもう一回見直すことができる。その意味で、これは詩人にしか書けない本だと言えるかもしれない。2015/02/28
佐々陽太朗(K.Tsubota)
77
長田氏が好きなもの。何でもない五月の美しい光景。無用の時、ふるさと、気風、「退屈」というゆったりした時間、遠くを見やる眼差し。長田氏が嫌いなもの。偏差値、最近氾濫している訳のわからない名詞。コンビニ、ファーストフード、メール、ネット。遠くを見る眼がなくなったこと。習慣の力がなくなったこと。失われたり、変容してしまった気風、スタイル、習慣を懐かしむ気分は大変よくわかります。しかし、いささか決めつけが過ぎます。とはいっても、この本を読んでいるあいだ、心なしか時間がゆっくりと快く流れていたのは確かだ。良き随筆。2014/02/28
うりぼう
55
詩人である著者が、1995年8月から2012年7月までの17年間、NHKの「視点・論点」で語った48編+α。著者の主張は終始一貫し、人は風景の中に在る。個に囚われ過ぎていないか。コミュニケーションのツールが多様化しながら、語彙を失っていないか。それは、受け止める力が弱まっているからか。様々な詩、小説、絵本などを引きながら、美しい言葉で紡ぐ。語りの一つひとつが、静謐で穏やかな気持ちにさせる。慌てるな、周囲を見渡せ、地に足を着けよという。勝海舟の「氷川清話」で対話を、「異世代/同時代」の重要さを繰り返し説く。2013/03/03