内容説明
長き眠りから覚めた古文書は、須貝たちの胸を揺さぶった。神を仰ぎ慎ましく暮らしてきた人びとがなぜ、聖職者により、残酷な火刑に処されなければならなかったのか。そして、恋人たちの目前で連続する奇怪な殺人事件。次々と暗号を解いてきた須貝とクリスチーヌの行く手には、闇が顎を開けていた。遥かな過去、遠きヨーロッパの地から、いま日本人に問いかける、人間という名の難問。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
149
この作品に出逢えて良かった。どこまでが真実かは分からない。カトリックのカタリ派への徹底的な迫害は、ヴァチカンでも隠したい事。本来、宗教は信じる人々に平穏を与える存在だと思う。宗教が権力と結び付いた時、おぞましい事態が起こる。カタリ派の抹殺しかり、十字軍しかり。現代でも宗教による対立で血が流れる。悲しいことだ。作品に戻ると、マルティの手稿は圧倒的だ。特にカタリ派の良き人ピエール・サンスと、ローマ教会のパコー大司教の審問の場面は息をのむ。真の黒幕は闇の中だが、私にとって貴重な読書経験である。紛れもない傑作。2017/05/04
ehirano1
83
『同族だから、憎しみも増加する』。確か、佐藤優氏が自身の著書で上手くしていたのを記憶しているのですが、どの著書だったか当方は今思い出すことが出来ません・・・情けない。2021/11/27
ehirano1
82
『物事って、何とかしているうちに何とかなる』。実は当方、「何とかなる」っていうのはなかなか受け入れがたい性分なのですが、「何とかしているうちに」というのが付けば大賛成です。「人生、藻掻いてなんぼ」とは何かの小説で読んだ記憶があります。何だっけ?「週末のフール(伊坂幸太郎)」?2021/01/16
ehirano1
77
約80ページにも及ぶ手稿は圧巻でした。主要参考文献も全てフランス語でこれも圧巻。エンディングも奇麗でしたが、「オクシタニア(佐藤賢一)」のインパクトが凄まじすぎた当方にはもう一つ欲しいところでした。2020/03/15
chikara
66
異端とされたカタリ派。慎ましく静かに暮らし、嘘をつかない人々が火刑となる。人間の大罪を見た。 空は青く大地は緑。それなのに私は悲しい。・・・このマルティの詩は胸に刺さります。凄い物語を読ませて頂きました。2015/07/06