内容説明
だれの心にも、鬼がいる。大胆不敵なトリックが冴える短編ミステリーの逸品集。かつて「衛生博覧会」と呼ばれる見世物が人気を博していた。疾病模型や死体写真が陳列されるなか、私は精巧な美少年の鑞人形に目を奪われた。だがそれには、驚愕の秘密が隠されていた(「悪魔のトリル」)。現代日本屈指のエンターテインメント作家の傑作短編集。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つーこ
40
いやー面白かった。高橋克彦といえば陸奥シリーズしか読んだことがなかったので、こんなに浮世絵や骨董、風俗に造詣が深いと知り驚いた。前半の『記憶』をテーマにしたホラーは背筋がぞわりとしつつ、物語が終わった後もその後を想像してしまうような読後感がたまらなく良かった。そして後半の推理シリーズ。テーマも面白いし、何よりも魅力的なキャラクターたちに好感を持ったので、ちゃんとシリーズで読んでみたくなった。2019/05/28
ntahima
37
数編を除き既読だが内容は殆ど覚えていなかった。読んで人生が変わったり感動の涙を流す類の話ではない。練達のエンタテイメント職人が自選した短編集。普通、どんな傑作でも途中でだれたり集中度を欠いて読む速度が落ちたりするものだが、全13編600頁超を一気に読み切った。それだけのリーダビリティはあると思う。お気に入りは記憶系と浮世絵系かな。一日一編ずつ味わって読む珠玉の作品集と言うよりは、予定のない雨の日曜日、ベットに寝っ転がって読み耽る面白本と言ったところか。続刊の恐怖小説編、時代小説編も探して読む予定。お勧め。2012/06/12
備忘録
15
前半はホラー寄りの短編から始まり ドールズの短編 後半は浮世絵を中心とした美術関連のミステリ と氏の作品の幅と趣味の幅広さを感じさせる内容 2025/05/31
ぐうぐう
15
短編を読むと、いや、短編集を読むと、その作家の個性が見えてくる。乱歩の「押絵と旅する男」を見事に現代に蘇らせた「悪魔のトリル」、幽霊や呪いよりも人間こそが怖いのだと言わんばかりの「奇縁」、そしてラストの一文が恐ろしすぎる「遠い記憶」。とても巧みな短編ばかりだが、その技巧が厭味になっていない点こそ、高橋克彦のうまさなのだろう。お得意の浮世絵ミステリも数作収録されているが、まるでマンネリ感がない。底知れぬ作家だ。2011/09/03
ikyo_01
8
少しずつ、少しずつ読んだ本。自選というところがそれぞれに解説がついてお得な所。そして、まだ読んでいないシリーズと出会えるのが素敵。 泉目吉のドールズ・シリーズと 塔馬さんシリーズは ぜひぜひ読まなくては。2011/01/26