内容説明
あの日、妻が消えた。何の手がかりも残さずに。樋口警部補は眠れぬ夜を過ごした。そして、信頼する荻窪署の氏家に助けを求めたのだった。あの日、恵子は見知らぬ男に誘拐され、部屋に監禁された。だが夫は優秀な刑事だ。きっと捜し出してくれるはずだ――。その誠実さで数々の事件を解決してきた刑事。彼を支えてきた妻。二つの視点から、真相を浮かび上がらせる、本格警察小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
167
結構スピード感があったように思いました。スリルやサスペンスは相変わらず控えめですが、心理描写に基づく言動のプロセスを楽しむのも本書の醍醐味の一つかなと思いました。2022/01/26
ミカママ
140
タイトルの意味に深く感動。そのラインからすれば、現在の私の毎日は「白秋」なんだわ。犯人は早期にわかってしまうので、犯人探しのミステリーではない。警察ミステリーと言うよりは、これは今野さんのメッセージ集なのでは。若者への、そして現在子育てをしている大人たちへの。どれも一つ一つ重かったが、しかと受け止めました。子育て中のお母さん方、お子さんに父親の偉大さを教えましょう。子どもが父を尊敬しなくなったらオシマイです。日本人同士の夫婦のありかたも興味深かった。15年前の作品だけれど古さをちっとも感じませんでした。 2015/03/01
ノンケ女医長
119
まるで何事もなかったかのように、平穏な生活を取り戻した描写で幕を閉じているけれど…。夫婦が経験した、並々ならぬ地獄は読み応えがあり、何度も余韻に浸ることができた。隠蔽捜査シリーズの竜崎冴子に通じるものもあるが、やはり警察官の妻は、あれほどに神経が研ぎ澄まされていくものなのだろうか。その一方、血相を変え助けを求め所轄を訪れた同職に、どうして警察官は非常事態を察知して積極的に助け舟を出さないのか、イライラもした。あってはならないけど、実際に今後起きる可能性がある事件なのかもしれない。タイトルも、秀逸。2024/06/10
修一朗
115
樋口顕シリーズの第二弾。1996年からもう25年も続いているシリーズだ。人の名前のようなタイトルは[青春の次の朱夏時代だよなオレたち]‥ということらしい。バディの氏家さんとのプライベートな捜査の8時間。捜査の合間に氏家さんと交わす会話はイマドキの若者と家庭での育てられ方はどうよ,という世のお父さんの嘆き節です。天童さん恵子さん照美さんとの関係は安定しているし昇進も着実,ちょいと哀愁も漂いながらの堅実な警察捜査を描くシリーズであります。事件の感想がないけどもまぁいいや。次,一つ飛ばして「廉恥」へ。2020/05/09
Hitoshi Mita
103
前作は主人公樋口の人となりを思いっきり全面に出してた感が強く、全共闘世代への反感が色がかなり強くてそこがちょっとって言う人もたくさんいそうだった。まぁ前作はそれ以降の樋口の活躍を暗示させるための前菜だと思えばなるほどと思ってしまう。こちらは前作の世代論もそうだが家族とは夫婦とはと言う問題に主眼を置いている。読んでいて、この家族感は日本独特な物のような気がした。世界どこに行ってもそういうところはあるのかもしれないが。事件に巻き込まれた樋口は家族とは何かと考えさせられながら事件に立ち向かっていく。面白かった。2014/10/31