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内容説明
僕だって、戦争へ行けば忠義をつくすだろう。僕の心臓は強くないし、神経も細い方だから――映画監督を夢見つつ二十三歳で戦死した竹内浩三が残した詩は、戦後に蘇り、人々の胸を打つ。二十五歳の著者が、戦場で死ぬことの意味を見つめ、みずみずしく描いた記録。第36回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
目次
序 伊勢にて
第1章 姉と弟
第2章 伝えられてゆく詩
第3章 バギオ訪問
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
157
第36回(2005年)大宅壮一ノンフィクション賞。伊勢で生まれ育った戦没の詩人 竹内浩三の 人生を追った作品である。 「あの時代」を 残された人々の証言と 竹内浩三の詩で 現代に伝える。 それにしても 竹内浩三の詩は なぜか 純真で 哀しい。巻頭のモノクロ写真が 印象的な本だった。 2018/10/18
ビブリッサ
76
23歳、銀座の喫茶店でレコードを聞き美しい女性に恋をし、詩を書いて映画監督を夢見た竹内浩三は、戦に征きフィリピン・バギオで戦死した。《どうかひとなみにいくさができますように》と願をかけ、時代に飲み込まれるように死んでしまった。多く人がきっとそうだ。戦争を始めたわけでもないのに兵隊になった人は、何のために?と思いながら それでも征き命をかけたのだ。彼の残した詩《青空のように五月のように みんなが みんなで 愉快に生きよう》反戦を声高に唱えなくても、彼の生きたかったという思いが、私の胸に刺さり痛みがひかない 2017/07/03
とよぽん
32
これまで戦争や平和に関する本は結構読んできたつもりだったが、まだまだ。と思い知らされた。平和について考えるなら、この本は必読の書だ。稲泉さんを動かした、伊勢市出身の詩人竹内浩三。戦争の時代に生まれ、望む望まぬにかかわらず皆が戦争に飲み込まれていった時代。竹内浩三は、人間の本質の声を書き残してフィリピンのバギオで「ひょんと」消えた。竹内浩三の遺した言葉を、私はもっと読まなければならないと思う。2018/11/17
ryohjin
18
兵隊は「ひょんと死ぬるや」という表現を自作の詩に残し竹内浩三は、昭和20年の4月に、フィリピンの戦地で23歳の生涯を閉じました。同じ年令で彼の詩に感銘した著者は、戦後、その作品を世に出した人々を取材しこの本が作られています。そこには姉や、詩集をまとめた同級生や後輩たちが登場し、それぞれの戦争体験や人生が語られ、そこから声高に反戦を主張するというより、その時代を飄々と生きたひとりの若者のイメージが浮かび上がります。著者は戦地を訪ねこの本は終わりますが、この若者の残された作品をぜひ読まねばと思いました。2024/08/16
浅香山三郎
15
戦中にかういふ人が居たのか、といふ驚きをまづ感じた。さうして、著者の稲泉さんの丁寧な描写で、竹内浩三の人生、姉の松島こうさんの思ひだけでなく、竹内浩三を再発見した人々(足立巻一、桑島玄二、西川勉、小林察)の歩みをも辿る。そしてバキオにも足を運ぶ。竹内浩三が戦中といふ状況下であれだけ正直な詩を書き続けたことと、その魅力に惹かれ乍ら、各々にとつての戦争に向き合はうとする人々の姿が重なり、戦争の意味を読み手にも問ふてゐる。2018/06/15