内容説明
廃墟から一致団結して抜け出した八人の戦災孤児たち。それぞれの道に進むが、唯一心をつなぎ支える子連れ未亡人「お母さん」の存在。その彼女も豊かさの代償に抜き差しならぬ事態に…。戦後日本の復興と精神を奮闘する孤児たちに託して描く、半村良畢生の感動大作ここに完結!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りょうけん
13
<晴> 別にとりたててどこがどう面白い,という様な作品ではないのだろう。でも主人公の子供たちが成人してゆく頃に僕自身も生まれたの(昭和34年)だなぁと思うと色いろ興味は沸いて来る。 当時の東京の暮らし,この下巻では特に銀座界隈の様子が手に取るように分かる。四国徳島の田舎で生まれ育った僕は,こういう本を読まない事には永遠に分からなかった事だろう。エンタテインメント小説ではないがとても面白い作品です。 2023/07/14
さいちゃん
7
上巻に引き続き、下巻も読みごたえたっぷりでした。やはり内容はすばらしく、飽きることなく読めます。あれこれいろんなことをやりながら読んでいたので、数日間読めない日もありましたが、内容が薄れることなく、しっかり頭の中に入ってました。子供たちの成長や生き様が、時とともに変化しながらも、大切なことを忘れることなく前を向いて生きている様は、キラキラと輝いてました。2013/08/31
tak
5
なかなか読み応え有り。がむしゃらに生きた、孤児たちのダイナミックな様は、清々しい。映画化するなら、キャストに悩むかな。戦争の清算の仕方は著者らしかったね。2013/12/10
izumone
3
毎年八月になると読み返したくなる。何年かおきに読み返す。そのたびに泣いてしまう。「嘘屋」の作者が,戦争でひどい目に遭った同世代に,物語の中だけでも「いい目」を見させてやろうと腕によりをかけた手向けの一話・・・そんな思いで,ただ作中世界に浸らせてもらう。2018/08/25
えみし
3
少年たちへの援助が、次第に薄汚い裏経済の策謀にと変化していく。新しい時代の経済から落ちこぼれていく黒幕の重藤のあがき。前田は戦争未亡人のお母さんを愛するようになるが、重藤のため「お母さん」が変貌していってしまう。うごめく欲望と晴れた空のような自由な戦後の繁栄で失われるものもあった。立派な社会人となった子供たちに、前田はある決意をする。ハワイの空に旅立っていく子供たちを見送る前田。ラストの涙なしには読めない、前田の「お母さん」の叫び。戦後発展の中で失われていったものとはなにかを考えさせられる。2015/11/02