内容説明
司馬遼太郎賞受賞作。争いを好まず、あえて負けを選ぶことで真の勝ちを得る――。乱世にあって自らの信念を曲げることなく、詐術とは無縁のままに生き抜いた小国・宋の名宰相、華元(かげん)。出目で太鼓腹の巨漢、人をつつみこむ、あかるく磊落(らいらく)な性格。西郷隆盛をおもわせる男、とは作者の言。名君・文公を助け、ついには大国晋と楚の和睦を実現させた男の奇蹟の生涯を、さわやかに描く中国古代王朝譚の名作。人間の器量について考えさせられる一冊!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
88
華元<(かげん)>は春秋時代の宋の名宰相であり、大国晋と楚の和睦を実現させたという人物である。ただし、冷静に読むと、和睦を実現させた華元という人物が残念ながら、心に残りにくいというのが 正直な感想だった。2010/06/12
KAZOO
77
小国である、宋の国の宰相である華元の生涯を追ったものです。彼自身の人物となりをはっきりと明確な感じでイメージすることはできないのですが、春秋戦国時代に大きな仕事をした人物ということはわかりました。よく中国史の中でこのような人物をさがしあててくるなあと思います。司馬遼太郎さんと似ていますよね。2015/07/10
新地学@児童書病発動中
42
策略を弄さず、信義をもとに中国の春秋戦国時代を生き抜いた宋の宰相華元の物語。司馬さんの言う人たらしの術に優れた華元の生き方が素晴らしい。馬鹿正直で愚直な華元は、困難に直面しても、それをいつの間に克服してしまう。乱世にありながら、人をできるだけ傷つけないという生き方のせいで、何処からともなく救いの手を差し伸ばされるのだ。司馬さんに似すぎているのはご愛嬌だけど、叙事詩的な気品ある宮城谷さんの文体が、この物語の本質によくマッチしていて、私の好みだった。2012/11/12
紫陽花
40
久しぶりの宮城谷さんの作品。この読書メーターを始める前に「重耳」など数作品を読んだことがあります。中国の春秋戦国時代を扱ったものが多く、この作品は宋の華元が主人公。春秋時代の宋という国も華元という人も知りませんでしたが、読みやすい内容となっています。「乱世において争いを好まず、あえて負けを選ぶことで真の勝ちを得ようとする。」打算的な世の中、ちょっと真似できませんね。作品自体は面白かったです。2019/08/04
シュラフ
34
宮城谷昌光はつ読み。この小説の主人公は華元(生没年不詳であるが紀元前616~589年頃に宋の名君・文公を助けて活躍)という人物。この華元の一番の功績は、中華の大国である晋と楚の和議を取り持ったことであるが、この小説のメインテーマは華元という人物の人となり。不遇の時代が彼を育てた。謙虚に人の意見を聞く耳をもっている。乱世にして詐術とは無縁にして自らの信念を曲げることない、という生きざま。まわり道をしながらも大きな仕事をはたす。われわれ日本人がしばらく前までもっていた、中国のよき大人のイメージそのままの人物。2017/03/20