内容説明
強力な統率力と強靭な抵抗精神でイギリス国民を指導し、第二次世界大戦を勝利に導いた歴史的な政治家チャーチル。本書は、歴史の舞台に直接参加した彼の手による、最も信頼すべき最高の第二次世界大戦の記録だ。深い歴史観に基づく著作活動によってノーベル文学賞を受賞した彼の歴史物語を堪能できる。第1巻は、一九一九年から第二次世界大戦勃発の翌年までを描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bashlier
24
5/5 第一大戦終結後、第二次大戦に向かうまでの足音が聞こえてくる作品。歴史書は第三者的な視点のものより、その時代を動かす立場にあった当事者による著作の方が面白い。ガリア戦記などがこれに当たるが、本書はその上をさらに飛び越えて秀逸な作品だ。ネヴィル・チェンバレンとウィンストン・チャーチルの対比はカズオ・イシグロの日の名残りを始めとして多くの作品でモチーフにされているが、チェンバレン伝と本書を対比して読むと人生に幾度は無いであろう程深い読書が出来る。日の名残りを再読すればさらに楽しめるだろう。2017/12/05
イプシロン
18
欧州戦線を知るためには必読の書といえる。ソ連崩壊後の情報公開を鑑みると、事実の分析はいかんともしがたい部分はある。ではあっても、チャーチルという人物その人のこと、チャーチルがいついかなる人と関わりあってきたかという点においては、今でも一級の資料だろう。なにより、下手な戦記作家には真似できない味わい深い文章が魅力的だ。意見が分裂し、政治的に対立した相手であっても、常に敬意を表すジェントルマン。英国への愛が溢れている。ボールドウィンから首相就任を示唆されたのは、本当のところ、氏のそういう人柄ゆえなのだろう。2014/10/31
hiroizm
15
ステイホームで4巻まとめて気になる箇所再読。これは政治家チャーチルがノーベル文学賞を受賞したきっかけとなった回顧録だけど、日本語の「文学」が持つイメージとはちょっと異なる気がする。情緒的感傷的な表現は控えめで箴言的なシャープな言い回しが多く、加えて日時、人数、お金、隻数、車両数などなど、とにかく数字にやたら細かいし、被害数、兵士数、Uボートに攻撃された場所などの図表も随所に挿入されてのも特徴。どこにいつどれだけの兵士、船舶、車両を用意し、敵がどれだけの兵力で結果こうなったのオンパレード。2020/04/14
たらお
13
失敗を学ぶ読書。「第一次世界大戦により疲弊し、平和を希求していたヨーロッパ大陸に再び戦争が起こってしまったのはなぜか?」それは、敗戦国ドイツが再軍備を進めていることを知りながら、「もうあんな戦争は起こらないだろう」という平和的観測により、周辺諸国がドイツに対して断固たる決断を下せなかったことにつきる。特にイギリスの責任は重い。当時の平和的風潮、国内政治の状況、国際連盟でのリーダーシップの欠如、ワシントン海軍軍縮条約により軍備バランスが崩れたことなど様々な要因があり、ドイツがその隙をついたということだろう。2015/08/04
あんさん
11
第一次世界大戦の終結後のドイツへの処置、そしてドイツの苦境、やがてヒトラーが台頭する。貧困からくるユダヤ人と共産主義への憎悪とヨーロッパへの憤怒か。ドイツ国境付近での軍備増強が明白にもかかわらず英仏は対応が遅れた。オーストリア・チェコスロバキア・ポーランドへの侵攻を抑止できず、やがて満を持したドイツ軍がベルギー・オランダへ侵攻を開始。チャーチルが挙国一致の戦争内閣首相に就任。第二巻へ。2025/07/26